日本国内だけでなく、世界中の国々で愛され、食されている日本食。マドンナをはじめとする日本食好きのハリウッドセレブは枚挙にいとまがないし、急速に発展を続ける中国経済の中で、たとえ政治がごたごたしていても、日本食レストランに対する投資熱は高まる一方だという。和食の定番、寿司や天ぷらだけでなく、最近は焼き鳥やカツカレー、日本式ラーメンなども人気が高いとか。そんな中、次代の日本食ビジネスを担う食材として、「かつおだし」が注目されている。
いうまでもなく、和食の根底には「出汁(だし)」の存在がある。古来より「かつおだし」をはじめ、煮干しを用いた「いりこだし」、「昆布だし」などなど、椀物やうどん、煮物などをつくるとき、だしは欠かせない存在だ。だしの良し悪しで、料理の味が決まるといっても過言ではないだろう。ところが昨年、味やうま味だけではなく、「かつおだし」には意外な効果が隠されていることが、京都大学農学研究科の近藤高史准教授や富山大学の西条寿夫教授らのグループによる研究で判明したのだ。なんと「かつおだし」には、満腹感を高めたり、情動を抑えたりする効果があるという。
男子学生19人の被験者を対象に行なわれた近藤准教授らの実験は、被験者の空腹時に「かつおだし」と「糖質を含んだ水」をそれぞれ同カロリー分飲んでもらって、胃の活動電位を計測するというものだった。その実験の結果、だしを飲むと胃の活動が活発化し、満腹感も高いということが分かったのだ。さらに「かつおだし」と同時に食事をすることで、食べ物が胃に長くとどまり、腹持ちも良くなるという。
また、マウスを用いた実験では「だし」を与えたマウスと「水」を与えたマウスで、他のマウスに対する攻撃性をしらべたところ、「だし」を与えたマウスの方が攻撃性が低く、攻撃時間も短かった。このことから、「だし」には情動を抑える何らかの効果があると考えられている。
日本食が海外でもブームを巻き起こし、ビジネスとして成り立っているのは、味もさることながら、ヘルシーであることが大きい。胃の活動を促し、満腹感を高めることが出来るのであれば、「かつおだし」を使った和食全般の強力なアピールポイントになり、次代の日本食ビジネスの大きな柱となりえるかもしれない。健康面での日本食の効用が、だしからも注目されそうだ。(編集担当:藤原伊織)