矢野経済研究所では、国内のプリペイド決済市場の調査を実施した。調査期間は2016年1月~5月、調査対象はプリペイド決済サービス提供事業者およびプリペイド決済サービス導入支援事業者、国際ブランド等。調査方法は同社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査を併用した。
2015年度のプリペイド決済市場規模は、非接触IC型電子マネーの堅調な拡大に加え、サーバー管理型電子マネーの急速な拡大により、前年度17.6%増の約7.5兆円まで拡大した。2016年度も前年度比15.8%増の約8.7兆円と拡大基調を維持し、2021 年度には約13兆円まで拡大すると予測している。
プリペイド決済は特定の加盟店で利用できるハウスカード型と利用可能店舗が多く利便性の高い汎用型に大別されるが、近年ではハウスカード型を発行している事業者が外部の加盟店開拓に取り組むなど、汎用性を高める動きが顕著である。またプリペイド決済は、企業やブランドの販売促進や顧客の囲い込みを目的として発行されることが多かったが、昨今ではクレジットカードの与信の厳格化が進んでいることもあり、クレジットカードが持てない(持たない)若年層やシニア層に対するキャッシュレス化のメリットを享受させることのできる決済方法としても対象範囲を拡大させているという。
こうしたなか、消費者の利便性の向上や利得性の提供などを基軸に、今後もプリペイド決済市場は非接触 IC 型電子マネー及びサーバー管理型電子マネーが堅調に推移し、ハウスカード型から汎用性のあるカードへの移行を進めながら拡大していくと予測している。
従来、小売事業者は他社との差別化や顧客の囲い込みを目的としてポイントプログラムを導入していたが、ポイントプログラムだけでは差別化が難しくなったこともあり、プリペイド決済とポイントプログラムを一体化することで、新たな販促策としてきた。プリペイド決済を活用することにより、ポイントの付与だけでなく、顧客のお金を事前に預かり、お財布に近い形で利用してもらう取り組みを進めている。大手スーパーでのプリペイドを活用した販促施策の成功事例を背景に、プリペイド決済を導入する小売事業者の動きが顕著である。今後は CRM(Customer Relationship Management)との融合が進み、さらなる付加価値の向上を目指していくものとみている。
2016年5月にビットコインなどの仮想通貨について「財産的価値」として定義し、実際の通貨と交換する事業者を登録制とするなどの規制を盛り込んだ改正資金決済法が成立した。これによりブロックチェーンやビットコインへの注目が集まっている。ブロックチェーンは、利用者同士をつなぐ P2P(ピアツーピア)ネットワーク上のコンピュータを活用し、権利移転取引などを記録、認証する仕組みである。現在、ブロックチェーンは、ビットコインなどの暗号通貨取引などに利用されており、大規模で高度なシステム基盤などを担う可能性のある技術である。現下、ブロックチェーンの技術を活用した地域型電子マネーの発行も検討されており、今後は様々な実証実験が行われるものと推察するとしている。(編集担当:慶尾六郎)