金融は追加金融緩和で業績V字回復できるか

2013年02月05日 19:41

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第二次安倍内閣の経済政策「アベノミクス」は、財政出動、金融緩和、成長戦略の「三本の矢」を実施してデフレ脱却、景気回復、経済成長を図る

 第二次安倍内閣の経済政策「アベノミクス」は、財政出動、金融緩和、成長戦略の「三本の矢」を実施してデフレ脱却、景気回復、経済成長を図る。総選挙後に自民党は日銀にプレッシャーをかけ、12月と1月に2ヵ月連続で追加金融緩和が行われた。しかし、4~12月期決算では総選挙後の15日間しか関わらず、不況が続いた日本経済全体の状況を反映し、メガバンクなど金融関連企業の業績はそれほど良くはなかった。

 三菱UFJ<8306>は、経常収益は9.3%減の3兆4380億円、実質業務純益(傘下2行合算ベース)は4%減の8915億円、経常利益は24.0%減の9364億円、純利益は34.7%減の5324億円。国内の預貸金収益が減少して資金利益が落ち込み、貸倒引当金の戻り益減少、与信関連費用の113億円増加などもあって利益が落ち込んだ。通期業績見通しの純利益6700億円という目標に変更はない。

 みずほ<8411>は、経常収益は8.1%増の2兆1363億円、傘下銀行合算の実質業務純益は24%増の6583億円、経常利益は60.9%増の5904億円、純利益は45%増の3917億円。貸出金利回り低下で資金利益は横ばいでも非金利収入は好調で、経費圧縮やみずほ証券の最終黒字転換、保有株の減損の約1500億円縮小などが利益増に寄与した。通期業績見通しは連結純利益5000億円のまま。

 三井住友FG<8316>は、経常収益は8.5%増の3兆1842億円、実質業務純益は1%減の6275億円、経常利益は9.0%増の8296億円、純利益は33.9%増の5504億円。消費者金融子会社が好調で、繰り延べ税金資産引当金の減少、与信コストの減少も寄与した。通期業績の純利益は5400億円で据え置いた

 野村HD<8604>は、収益合計は5.7%増の1兆3598億円、純営業収益が12%増の1兆1600億円、税引き前利益が2.8倍の680億円、純利益は248億円(前年同期は104億円の赤字)。10~12月期の株高で株式、投資信託の収益が大幅に伸び、債券売買部門も法人部門も好調。通期業績見通しは出していない。

 オリックス<8591>は、営業収益が11.6%増の7834億円、営業利益が19.6%増の1203億円、純利益が35.3%増の901億円。中小企業向けリース、生命保険事業が堅調で、不動産部門で市況が持ち直し不良資産の不動産の売却が順調に進んだ。通期業績見通しは純利益を100億円上方修正している。

 11月15日以降、自民党の安倍総裁が財政出動や金融緩和をめぐる発言を連発し、政権交代後の政策期待で円安と株高が大きく進行した「安倍相場」は、金融関連企業の業績に少なからぬ影響をもたらしている。長期金利は大きくは上がらず、保有する巨額の国債の資産価値の下落は目立たない一方で、株高によって保有株式の評価損が圧縮し、その分、財務状況は改善しつつある。もっとも、中小企業金融円滑化法の適用が3月末に打ち切られる予定で、自己資本の増強を迫られる「バーゼル3」は年初から段階的に始まった。来期はアベノミクスの金融緩和効果とともに、その影響も出てくる。(編集担当:寺尾淳)