官民が一体となって取り組んできた鉄道インフラ輸出。昨年は日立製作所<6501>が英国運輸省と、約30年にわたり英国主要幹線を走行する車両のリース事業及び合計596台におよぶ車両の製造並びに27年半にわたる保守事業を一括受注するなど、一定の成果が形となって現れた年となった。この勢いをさらに加速させるべく、東日本旅客鉄道(JR東日本)<9020>がアジア拠点としてシンガポール事務所を設置すると発表した。
昨年10月に策定した「グループ経営構想Ⅴ~限りなき前進~」において、グローバル化など「新たな事業領域への挑戦」を掲げ、海外鉄道プロジェクトへの参画をめざして取り組みを強化しているJR東日本。昨年11月にはベルギーのブリュッセルに事務所を構え、欧州における活動を開始していた。そして今回、アジアにおける鉄道・生活サービス事業に関する情報収集や市場活動、広報活動などを実施するシンガポール事務所を設置するという。開設日は3月15日で、当初は4名から活動をスタートさせる。
昨年、鉄道インフラ輸出で成果を出したのは、ニューヨーク・ニュージャージー港湾局向け新型電車350両の納入を完了し、シンガポールLTA向け地下鉄電車132両を受注した川崎重工<7012)や、インドネシア・ジャワ幹線鉄道電化・複々線化工事を受注した住友商事<8053>と三菱重工<7011>など、実際に旅客を運送している企業ではなく、あくまでもインフラ企業であった。これに対し今回海外拠点を構えたJR東日本は、実際に運送業務を担う企業であり、よりサービス業に近い業態である。単なる物理的なものの輸出ではなく、システムやノウハウといった無形インフラの輸出とも言えるであろう。鉄道インフラ市場には2030年までに392兆円が投資されると予測されている。この莫大な市場において、発注国と日本の双方にとってメリットのある形でいかにしてシェアを拡大していくのか。注目が集まるところである。(編集担当:井畑学)