介護事業に参入している大企業での再編が続いている。東京海上グループは7月、介護付き有料老人ホームを運営する東京海上日動サミュエルと居宅サービスを展開する東京海上日動ベターライフサービスの合併に踏み切った。同グループでは東京海上日動ベターライフサービスで昨年7月にサービス付き高齢者向け住宅の運営に参入し、介護事業で順調な展開を見せている。4月にはパナソニックグループでは居宅サービス、高齢者住宅事業、福祉用具貸与など介護事業4社が統合。また、長谷工グループは中間持ち株会社、長谷工シニアホールディングスを設立し、センチュリーライフ、生活科学運営、ふるさとのグループの3社を傘下に置いた。このほか、損保ジャパン日本興亜グループは、昨年12月から相次いで買収したワタミの介護(現SOMPOケアネクスト)、メッセージ(現SOMPOケアメッセージ)などを一括してマネジメントするためSOMPOケアを設立した。
各グループのこうした再編の動きは、経営効率化や介護職員確保といったメリットを産み出す目的以外にも経営規模拡大により変化の激しい介護業界において競争力をつける狙いがある。例えばパナソニックでは、来るべき介護業界へのICT化に備え、介護ロボットやセンサーなどのIT機器の開発や導入の相乗効果を計る目的があると考えられる。また、2018年度介護保険制度改正では保険給付の対象から軽度の要介護者が外される可能性があり、経営の安定化を計るため介護保険外サービスへの参入も目立つ。ALSOKは自らも訪問介護事業に進出しているが、介護保険内外のサービスをワンストップで提供すべく、居宅サービスや入居施設サービスの他福祉用具貸与事業も展開するウィズネットを買収している。
制度の変化に利益が左右される介護業界においては、やはり複数の事業を展開する大きな企業が有利だといえる。労働力不足を補うテクノロジーの導入に関しても体力があり迅速に新システムを導入できる企業が生き残りやすい。25年には15兆円規模になるといわれる介護業界だが、今後も大企業による再編や合併・買収などにより勢力図は大きく塗り替わると予想される。(編集担当:久保田雄城)