15年度の国内介護ロボット市場規模は前年度比549.0%の10億7,600万円と大きく伸長

2016年07月04日 08:02

 矢野経済研究所では、国内の介護ロボット市場の調査を実施した。調査期間は2016年3月~6月、調査対象は国内の介護ロボットメーカーやその研究開発に取り組む企業、関連団体、関係省庁等。調査方法は同社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査を併用した。

 それによると、2015年度の国内介護ロボット市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年度比549.0%の10億7,600万円と大きく伸長した。2013年度から国家プロジェクトとして始まった「ロボット介護機器開発・導入促進事業」は、2014年度までは経済産業省、2015年度以降は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が事業主体となり、介護ロボットの実用化と製品化を目的に多くの企業が参画した。

 全てが製品化までこぎつけたわけではないが、2015年頃より製品化されるものが出始め、介護ロボットの実用化に成果を出しつつあるという。なかでも、2015年度までに製品化された装着型移乗介助ロボット、屋外型移動支援ロボット、介護施設型見守り支援ロボット、および既に自動密着式便器型として製品化されている排泄支援ロボットが先行して市場を牽引し、2015年度の同市場は大幅な伸長となった。

 「ロボット介護機器開発・導入促進事業」は2015年度までに多くが終了したが、目的と機能を定めた開発が進み、その製品化に成果が出つつある。その一方で、導入する側の介護保険施設・事業所での金銭的負担を軽減するため、厚生労働省は2015年度補正予算で「介護ロボット等導入支援特別事業」を決定し、「介護従事者の負担軽減に資する介護ロボット導入促進事業」と「介護ロボット等を活用した見守り支援機器導入促進事業」を実施する。

 前者は、先進的な介護施設が介護ロボットを活用することで介護業務の負担軽減や効率化の参考例とすることを目的とし、20万円以上の製品を対象に全額を補助し、1施設・事業所につき上限は300万円となる。後者は、市町村が個人向けに貸し出す見守り支援機器に対して、1機器10万円を上限に補助される。このように、介護ロボットの開発だけでなく、普及においても国が支援する方策が出されたことで、介護現場における介護ロボットの認知度向上と効果的な使い方の提案が期待され、普及の呼び水になる見込みであるとしている。

 2016年度以降も、新規参入メーカーの増加や新製品の投入が期待され、市場の拡大傾向は持続し、2020年度の国内介護ロボット市場規模(メーカー出荷金額ベース)は149億5,000万円に達すると予測する。

 分野別にみると、製品化もしくはその目途がついている装着型/非装着型移乗介助ロボット、屋外型移動支援ロボット、介護施設型見守り支援ロボットについては、2020年度までに市場が構築される見込みである。排泄支援ロボットは、既に製品化されている自動密着式便器型の製品に加え、今後 3 タイプの新製品が投入される見込みで、これにより潜在需要を取り込み、市場規模の更なる拡大を見込んでいる。(編集担当:慶尾六郎)