IT専門調査会社 IDC Japanは、国内第3のプラットフォーム市場(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)の金融分野における2016年~2020年の市場予測を発表した。
2016年は、大手金融機関に加えて地方銀行などでも第3のプラットフォームの積極的な採用が進んでいることから、国内第3のプラットフォーム市場の金融分野IT支出規模は8,852億円、前年比13.3%増と2桁の高い成長率を予測している。金融機関の多くでは既にモビリティ(スマートフォン、タブレット)が営業店舗、または営業職員における業務支援用として導入が進んでいるが、クラウドの採用も幅広い業態で進展している。また、収益拡大を目的に、ビッグデータと認知(コグニティブ)システムの本格的な活用に向けて検証が開始されており、2020年まで第3のプラットフォーム市場の支出は堅調に拡大するとIDCでは予測している。
国内金融機関では、第3のプラットフォームと同様に「FinTech」(ITを活用した新しい金融関連サービス)によって自行/自社サービスを強化する金融機関も増加している。現時点では、検証段階にとどまっている金融機関が多いものの、一部では「FinTechスタートアップ企業」などと連携して「FinTech」関連サービスを提供するケースも徐々に増えている。
IDCでは、「個人資産管理」「金融情報/投資支援」「テレマティクス保険」「会計/経営情報」「ソーシャルレンディング/トランザクションレンディング/クラウドファンディング」「決済」「暗号通貨」「ブロックチェーン」の8サービス分野において、サービスを提供、活用するために「FinTechスタートアップ企業」など外部企業と連携、または自行/自社でシステム開発、運用するためのIT支出額を「『FinTech』関連IT支出規模」として推計した。
この結果、国内金融機関における「FinTech」関連のIT支出規模は、2016年に56億円と予測しているという。また、2020年には318億円と2015年の約10倍の規模に拡大すると予測している。特に2020年に向けて広範囲での業務システムでの活用が見込まれる「ブロックチェーン」のIT支出が拡大するとみている。
国内金融機関では収益拡大、コスト削減/業務効率化の観点から、第3のプラットフォーム/イノベーションアクセラレーター分野(IoT、3Dプリンティング、AR&VR、認知(コグニティブ)システム、ロボティクス、次世代セキュリティ)、並びに「FinTech」関連のIT支出も堅調な拡大を見込んでいる。しかし、導入の検討に際して、推進体制の整備の遅れなどの課題に直面する金融機関が多いとみている。
IDC Japan ITスペンディング リサーチマネージャーの市村仁氏は「ITサプライヤーは、今後も金融機関向けビジネスを拡大させるためには、事業構想段階からの参画、支援が重要になる」と分析している。(編集担当:慶尾六郎)