IT専門調査会社 IDC Japanは、国内IT市場 産業分野別の2015年下半期の実績の分析、および2016年~2020年の市場規模予測について発表した。
それによると、2015年は、国内IT市場規模が14兆6,284億円、前年比成長率はマイナス0.6%の実績となった。携帯電話基地局関連への設備投資などの抑制傾向が進んだ通信/メディアが前年比8.9%減となり、全体の成長率を押し下げたことが大きな要因だとしている。一方、全体の成長率を押し上げた産業分野は、大型案件が継続する銀行とオムニチャネル推進に関連した投資が進む小売だという。IDCでは両産業分野は、2016年以降も堅調な成長率を維持すると予測している。なお、不安定な中国経済や中東情勢など海外経済のリスクが懸念される中、これまでIT投資が堅調に推移してきた製造業分野で、投資の積極性が若干弱まるとみている。
2016年の国内IT市場規模は14兆5,683億円、前年比成長率はマイナス0.4%を予測し、2015年~2020年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は0.8%、2020年のIT市場規模は15兆2,413億円を予測する。次年に東京オリンピック/パラリンピックを控える2019年をピークにIT投資が堅調に伸び、2019年は2.8%の前年比成長率を予測するが、その反動で2020年は前年比成長率マイナス1.0%を見込んでいる。多くの産業分野で2020年は横ばいにとどまるが、一般消費者において予測される大幅なマイナス成長が同年の全体の成長率を引き下げる要因となるとしている。
製造、運輸/運輸サービス、公共/公益、情報サービスは、2016年は比較的緩やかな成長を予測するが、2017年以降、2019年をピークに堅調な成長を見込んでいる。東京オリンピック/パラリンピックを控え、IDCが提唱する第3のプラットフォーム(クラウド、ビッグデータ/アナリティクス、モビリティ、ソーシャル技術)やIoT(Internet of Things)などの「イノベーションアクセラレーター」を活用した社会インフラ整備に関連する投資が成長率を押し上げる要因として挙げられるという。
第3のプラットフォームを積極的に取り入れ、ビジネス成長に戦略的にITを活用している産業分野を中心に、安定したIT投資が維持されるとみている。また、2016年3月に実施したユーザー企業調査では、産業分野ごとに業務の現場における第3のプラットフォームの活用度の差異が見られたという。
IDC Japan ITスペンディング マーケットアナリストの岩本直子氏は「業務の現場で第3のプラットフォームの活用が進む現状を踏まえ、ITベンダーはユーザー企業の業務への理解をいっそう深め、テクノロジーが現場の課題解決や生産性向上にどのように貢献できるのかに提案の焦点を合わせるべきである」と述べている。(編集担当:慶尾六郎)