矢野経済研究所では、国内の給食市場の調査を実施した。調査期間は2016年 4月~6月、調査対象は給食サービス企業等。調査方法は同社専門研究員による直接面談、電話等によるヒアリング、ならびに文献調査を併用した。
2015年度の国内給食市場規模は、前年度比101.2%の4兆5,525億円(末端売上高ベース)であった。高齢者施設給食、弁当給食のうち在宅配食サービスの高齢者向けと、幼稚園・保育所給食のうち乳幼児向けが市場を牽引した。当面、この 3 分野における需要は堅調であるとみられるとしている。今後は高齢化社会を背景に、高齢者施設給食を中心に給食市場全体は安定的に推移するものと考えるとしている。
2015年度の事業所対面給食は前年度比101.3%の1兆2,900億円であった。事業所対面給食の需要分野をみると、東京都心を除いてオフィスの新築・移転は落ち着いたようであるが、大手製造業においては景気回復を受けて、国内の工場ラインの稼働率が上がり、従業員向けに食事の提供回数が増えたことなどが好影響を与えているとしている。
2015年度の弁当給食(在宅配食サービス含む)は前年度比102.4%の6,000億円であった。事業所向けの弁当給食は、小規模なオフィスや工場が需要の中心であるが、ここでは従業員数の減少が未だ続いており、市場も微減傾向にある。一方、在宅高齢者向けの配食サービスは、市場を牽引した大手事業者の低迷はあるものの、生協や給食サービス事業者の本格参入により需要が掘り起こされ、全体としては拡大傾向にあるという。
2015年度の病院給食は前年度比99.4%の1兆1,899億円であった。国の医療政策や病院経営の赤字化などから、病院数は減少傾向にあり、病床数の減少に伴い入院患者数も減少している。こうしたなか、食事による入院患者の早期回復を促す取り組みを行うとともに、病院給食は外部委託(直営からの切り替え)が進んでいる。こうした外部委託は拡大するものの、長期的には病院数、および病床数の減少に伴い、市場規模は微減推移すると見ている。
2015年度の高齢者施設給食は前年度比102.8%の8,545億円であった。高齢者施設給食は、特別養護老人ホームや老人保健施設の新設自体が減少しており、新たな施設給食の受託件数は減少傾向にある。一方で、比較的給食単価の高い有料老人ホームが増加していることから、この分野における受託は好調である。
2015年度の学校給食は前年度比101.0%の4,525億円であった。少子化を背景に、児童・生徒数は長期的には減少傾向にあるものの、公立の小・中学校では、経費節減や食中毒防止を目的に専門の給食事業者に民間委託する動きが強まっている。これをうけて公立学校への積極的な営業活動を展開する給食事業者も増えている。
2015年度の幼稚園・保育所給食は前年度比102.5%の1,656億円であった。幼稚園では他園との差別化から、弁当持参から給食へ移行する施設が増えている。また、文部科学省が推進する『食育』もこれを後押ししている。一方、保育所は政府や地方自治体が待機児童解消を積極的に推進していることから、保育施設の拡充を図っている。こうしたなか、園児数の増加から保育所給食の需要は堅調であるとしている。(編集担当:慶尾六郎)