7月29日時点の需給データは、信用買い残は7月22日時点から636億円減の2兆1550億円で、2週ぶり減少。信用倍率(貸借倍率)は3.30倍から3.34倍へ2週続けての増加。信用評価損益率は-14.19から-14.72へ3週ぶりの悪化。裁定買い残は236億円増の8483 億円で、3週連続で増加している。
東証が発表した7月25~29日の投資主体別株式売買動向によると、外国人は2週ぶりの買い越しで買越額は788億円、個人は2週ぶりの売り越しで売越額は988億円、信託銀行は2週連続の買い越しで買越額は505億円となっていた。
前週のカラ売り比率は前週に続いて終始40%台。1日は41.4%、2日は42.0%、3日は43.6%、4日は43.7%、5日は42.2%という高水準だった。信用取引の需給は決して良くないが、それでもザラ場にいきなり為替の円高とセットの先物仕掛け売りでボロボロにされる「ゲリラ急落」が起きなかったのが不思議。それが起きるほどの高値圏ではなかったということか? それとも規模が倍増した日銀のETF買いがそれを阻んだのか?
その証しかどうかわからないが、日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)の5日終値は21.51で、7月29日終値26.60から5ポイント以上も低下した。前々週にアメリカと日本、前週に英国の中央銀行イベントを通過し、恐怖指数は過去6カ月間で最低の水準まで落ち着いていた。
今週のスケジュール、テクニカル指標、需給データ、VI指数などを総合すると、ほぼニュートラルなポジションの今週はSQ週ではあるが安定度は比較的高く、日米欧とも為替市場に大きな影響を及ぼすようなイベントが見当たらない上に東京市場は11日が祝日休場なので、「雲」にしっかり下支えされながら派手な上値追いもできず、値動きは小さくなりそうだ。ボラティリティも夏休み、というところか。
5日に発表されたアメリカの7月の雇用統計は、非農業部門雇用者数の伸びが25.5万人で市場予測の19万人を大きく上回り、平均時給も2.6%増の25.69ドルと好調。完全失業率は前月比横ばいの4.9%で市場予測の4.8%までは下がらなかった。これでFRBの9月利上げには好環境を準備した。
5日のNYダウは191ドル高だったが、ドル円は一時ドル高が進んで102円台になったものの結局戻されて101円台後半、ユーロ円は112円台後半。CME先物清算値は16420円、大阪夜間取引終値は16430円だった。
今週、日経平均に大きな変化が起こるとは考えにくい。まず、上値追いするエネルギーが夏枯れ気味。もともと機関投資家が夏休みモードに入る時期である上に、為替は依然アゲインストの風が吹いている。東京市場は「円高は全てをさいなみ、円安は全てを癒す」なのに、雇用統計の結果、ドルが買われてもそれは半日限り有効で、世界的に円買い圧力が強く為替の円高が治らない。これは各国の金融政策に起因する構造的な問題なので、円売り介入オペ程度では効かないだろう。
今週の上値追いはドル円が高々102円台程度の為替レートに足を引っ張られ、8日に75日線の16371円を超えるとしても、6月メジャーSQ値の16639円、25日線+1σの16680円あたりが限界とみる。9日、10日はSQ週の火曜日、水曜日の「鬼門」で、40%を超えるカラ売り比率も不気味な脅威だ。
一方、下値の支えとしては日足一目均衡表の「雲」の他に、前週、その規模が1回700億円以上に倍増した日銀のETF買いがある。1日の売買代金を2兆円としても700億円は3.5%にすぎないが、売買代金の大半は前場に集中しており、軟調な相場で後場からまとまった買いが入るというのは、サッカーの試合で後半途中から投入されて疲れている相手をかき回す元気な控え選手のようなもので、それなりのインパクトはある。「バンドワゴン」と言って、その動きに便乗しておいしい思いをしようとする勢力もあらわれる。
ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは上下500円幅で16200~16700円とみる。
マーケットは、EU離脱を決めた英国の国民投票前から直近の「ポケモンGO」の任天堂<7974>人気まで、ずっとハイテンションと激しいボラティリティが続いた。「夏休み」をとって英気を養うなら、今週はいいチャンスだろう。(編集担当:寺尾淳)