【コラム】護憲・改憲鮮明になった憲法記念日の政党姿勢

2025年05月11日 09:03

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今年の憲法記念日、改憲派、護憲派集会で「憲法9条」(戦争の放棄)を軸に政党色が鮮明になった

 今年の憲法記念日、改憲派、護憲派集会で「憲法9条」(戦争の放棄)を軸に政党色が鮮明になった。

「憲法を守り、生かそう」と都内で開かれた「未来は変えられる!戦争ではなく平和な暮らし!2025憲法集会」では(1)改憲発議を許さず、憲法をいかし、平和・いのち・くらし・人権を守る(2)パレスチナの恒久的停戦とウクライナからの撤退、憲法9条をいかした平和外交を求める(3)台湾有事の扇動を許さず、敵基地攻撃能力保有と日本全土へのミサイル基地配備の撤回を求める、などをスローガンに3万8000人(主催者発表)が集結した。

集会では立憲民主党・辻元清美代表代行、日本共産党・田村とも子委員長、れいわ新選組・櫛淵万里共同代表、社会民主党・大椿裕子副代表らがあいさつに立った。

 一方、「憲法改正の国会発議を求める!言論人・有識者の会」メンバーでもあり、改憲派リーダーの一人、櫻井よしこ氏が主催する「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が開いた公開憲法フォーラムでは「各党は改憲の共同作業に着手せよ」をスローガンに都内の砂防会館で早期改憲を訴えた。

 安倍政権下で憲法9条の事実上の「解釈改憲」を後押しした百地章・日大名誉教授や西修・駒澤大学名誉教授、産経新聞特別記者・有元隆志氏らのほか、政党から自民党・古谷圭司憲法改正実現本部長、公明党・浜地雅一憲法調査会事務局長、日本維新の会・青柳仁士政調会長、国民民主党・川合孝典憲法調査会長が参加した。

 古谷氏が「議論段階から条文とりまとめの起草委員会をつくって作業を」との呼びかけに3党の出席者が賛成の意向を示した、という報道がある。憲法9条への自衛隊明記、緊急事態条項創設を目指している。

 自衛隊明記については「明記は徴兵制に道を開く」と危惧する声も出ている。自衛隊員確保は安保法制実現後、毎年、予定数に届いていない。

 石破茂総理(自民党総裁)は故・安倍晋三氏が総理時代に国会質疑や質問主意書で「徴兵制は憲法の禁じるところの『苦役』にあたる。これは明快である。憲法解釈で変える余地は全くありません。これははっきり申し上げておきたい」と答弁し、徴兵制導入はできないと明言したことに、自身のブログで「民主主義国家を守る立場から、徴兵制が苦役というのには違和感を覚える」と異議を唱えた。石破氏の本音と感じる。

 石破総理は2015年6月19日の安保法制の特別委員会での国務大臣としての答弁では閣僚の一人として「我が国においては憲法によって徴兵制をとらないという考え方でございます。その考え方の根拠に何を持っていくかというのは、それぞれの考え方がございましょう。しかしながら『日本国憲法において、それは認められない』という話になっております」と「現行憲法下では徴兵制は認められないという話になっている」と自身の考えではなく「そのような話になっている」と答えている。

 話である以上、状況変化によって変わる可能性を残したとも受け取れる。石破総理の公式HP「石破茂の政策」(自立した安全・安心の国へ)では「憲法解釈を見直し、アジア太平洋地域における集団安全保障体制の創設をめざします」と解釈見直しを明記している。加えて、現行憲法下で「敵基地攻撃能力の保有」までが公然と行うまでになった。

 『抑止力』という名の「殺傷・破壊武器」は核兵器、大陸間弾道ミサイル(ICBM)以外、全て是認されそうな状態にまで拡大されてきた。平和憲法下で「自衛のために必要最小限度の実力行使のための装備(武器)」に収める概念が遵守されていると言えるのか。立ち止まって、考えるべきだろう。

 元イスラエル空軍兵で1988年から日本に在住するダニー・ネフセタイ氏は反戦をテーマに講演活動している。ダニー氏は日本の憲法と精神のすばらしさを強調したうえで、『敵』の概念は『歪んだ教育』と『煽り』によって生まれる、と本質を突く。そして、高校生のうちに『戦争の避け方』を1年間学ぶ必要がある。『近隣諸国は敵ではない』ということを伝えることが重要と自らの歩みを踏まえて語った。

 ダニー氏は「国のために死ぬのは素晴らしいとの教育を受けた」と本国で歪んだ教育を受けていたことに気付いたとし、同時に日本の最近の防衛費に触れ、その拡大に警鐘を鳴らした。

 日本の防衛費は「1秒31万円」にも上ると指摘。「武器は役にたたない。外交努力こそ」と平和外交に一層努めるよう提唱した。われわれ日本人は憲法とその精神を今一度、確認すべき時を迎えている。

 「ロシアによるウクライナ侵略、東アジアにおいても同じことが起こるかもしれない」「台湾有事は日本有事。敵基地攻撃能力保有は必要だ」。煽りとはいえないのか、最もその感を受けたのは安倍政権時2017年8月、9月の北朝鮮のミサイル発射だった。この時、政府は北海道だけでなく、広く東北地方や北関東地方にまで「全国瞬時警報システム(Jアラート)」を作動させ、北海道や東北地方の住民に待避要請までを行った。

 当時、安倍総理は「発射直後から北朝鮮の動きを完全把握していた」と記者団に語っている。どのルートで通過するかは認識できていたはずだが、Jアラートを広範囲に適用することにより、不安を煽ったと言えまいか。国内右派や米国要求の防衛費拡大へ国民理解を得るための「煽り」を懸念する。情報が持つ意味、情報の背景、状況を国民一人一人が自身で考える習慣を身に着けることが必要な時代になった。(編集担当:森高龍二)