家族の絆に注目した福利厚生

2012年12月03日 11:00

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住宅メーカーのアキュラホームが記念品として社員に贈呈する「夫婦椀」

 企業が取り入れている福利厚生制度と言えば、社会保険や住宅補助の各種手当など、給与以外の給付という形をとっているものが一般的には知られているが、ここ数年、ユニークな社内制度の導入や個性的な贈呈品制度を行っている企業も増加傾向にある。

 長引く景気低迷の影響で、企業のコスト削減の波を受け、福利厚生も施策見直しや休止するケースさえも出ている。一方では従業員のメンタルヘルスやバイタリティの欠如による業績低下など、改めて福利厚生の必要論も叫ばれている。

 そんな中、福利厚生に対し、独自のカラーを打ち出す企業も増えている。内容も社会問題を反映した人材育成や雇用問題、そして育児など、それに直結する施策を導入していく傾向が強い。また、震災以降、特に注目されるようになった”家族の絆”に直結するような制度やプレゼントを積極的に行う企業もある。

 高島屋ではワーク・ライフ・バランスの実現を「両立支援制度」という形で導入している。育児休暇や介護休暇をはじめ、多数の制度が設けられ、子どもの学校行事へ参加するための「スクールイベント休暇」や、失効した有給休暇を積み立て、育児や不妊治療のための休暇に充てることができる「リザーブ休暇」など、ユニークなものも存在する。他にも単身赴任者が一時帰宅ための休暇として「おかえりなさい休暇」というネーミングも変わっているものもある。仕事と家庭の両立が不可欠であるという考え方は、特に男性も育児参加がしやすいように環境整備がなされている。

 ソニーで行われているのは、50年以上もの歴史を誇る「ランドセル贈呈式」。1959年に創業者である井深大氏の発案で始まったもので、社員の家族で小学校へ入学する子どもを対象に贈呈されており、現在も行われている。2009年からは、そのランドセルを役立てるための「Re‐ランドセル」という企画をスタートし、アフガニスタンの子どもたちに想い出のランドセルを寄贈している。

 住宅メーカーのアキュラホームは、社員の結婚や新築の祝いに記念品を贈呈するお祝いの制度を新設した。贈られる記念品は「輪島塗の夫婦椀」で、年月が経つほど艶が増し、傷んでも修理することで元通りに使用できる伝統工芸品で、末代まで受け継がれると言われているもの。これは、同社の家守りというアフターサービスの考えと通じており、お椀の裏にはその精神である「永代家守り」という言葉が記されており、企業側の想いを伝えている。

 従業員やその家族を大切に思う気持ちを制度や贈呈品に変えるユニークな福利厚生は、実際務める人たちのメンタルヘルスとして、非常に大きな役割を果たしているに違いない。