昨年、震災の影響により急激に需要の拡大したミネラルウォーター市場。日本ミネラルウォーター協会の統計によると、国内生産の数量は前年比123%、輸入量も前年比140.7%と大幅に伸長し、2011年の清涼飲料水市場の落ち込みを補った形となっている。
こうした中、今年、大手飲料メーカーでミネラルウォーターの新商品を発表したのはアサヒ飲料と伊藤園の2社。伊藤園は、島根県浜田市金城町を水源とする弱アルカリ性の天然水「Pure Water」を、3月5日から地域を限定して販売を開始。アサヒ飲料は、従来の「アサヒ 六甲のおいしい水」ブランドを、全国統一の「アサヒ おいしい水」ブランドへと変換。採水地別に新商品「アサヒ おいしい水 六甲」と「アサヒ おいしい水 富士山」の販売を6月から開始すると発表している。
このようにミネラルウォーター市場であまり大きな動きがない中、大きく動き出そうとしているのがフレーバーウォーターである。
コカ・コーラが2009年5月から発売し、発売からこれまでに累計出荷本数13億本を突破したという「い・ろ・は・す」ブランドでは、2010年7月に発売した温州みかんエキスの入った「い・ろ・は・す みかん」が2億本を突破。今年4月からは、長野県産りんごエキスを加えた「い・ろ・は・す りんご」の販売を開始している。
アサヒ飲料からは、安心・安全のロングセラーブランド「三ツ矢サイダー」で使用するろ過をかさねた「磨かれた水」に国産レモン果汁1%を加えたフレーバーウォーター「三ツ矢のきれいな水 レモン PET485ml」を4月24日から全国で新発売。容器には冷凍可能なPETボトルを採用し、暑い季節に凍らせて飲むことを想定した商品となっている。
またダイドードリンコからは、ウォーターブランド「ミウ」シリーズから、ライチのほのかな甘さが楽しめるニアウォーター「ミウ クリアライチ」を4月16日から発売。きれいに磨いた純水に、高知県「室戸海洋深層水」由来の成分を加え、さらにライチ果汁と果糖をプラス。硬度が200mg/Lあるものの、ライチのほのかな甘さが、硬水特有の後味を感じさせない商品だという。
昨年の生活用水としての一時的な需要から、飲料用へと需要が回帰し、あらたな動きが出てきたミネラルウォーター市場。フレーバーウォーターは、ヨーロッパをはじめ海外では多く見られるものの、日本では馴染みが薄いものである。また平成10年、日本のフレーバーウォーターの先駆けともいえるJTビバレッジの「桃の天然水」に、カビが混入しているとして回収されるといった事態もあったことから、その記憶が残っている人にとっては、手を出しにくい商品ジャンルと言えるかもしれない。今夏も節電対策が必須となる見通しである。そうした中、水分補給としての需要を追い風として、どれだけフレーバーウォーターが定着していけるのか。これからの動向に注目したい。