【電機業界の2017年4~6月期決算】「為替の影響がなければ……」と言える企業も、言えない企業もある

2016年08月18日 08:22

 富士通<6702>は売上収益7.4%減、営業損益は赤字額が273億円から112億円に縮小、税引前損益は赤字額が168億円から132億円に縮小、四半期損益は赤字額が176億円から152億円に縮小、最終四半期損益は赤字額が189億円から140億円に縮小したが、赤字決算。円高の影響で海外売上が円ベースで目減りして減収。自動車業界、通信業界向けのシステム開発は好調でも、スマホ向けLSIが苦戦した。それでも「ほぼ計画通り」(塚野英博取締役)という。営業赤字の圧縮に寄与したのはパソコン事業の分社化などに伴う構造改善の効果と、サーバー部品などの調達費の削減だった。

 ■海外が良くても悪くても円高で業績不振一色に染まる

 総合電機8社はそれぞれ、直近の稼ぎ頭とは別に、将来の成長を託し先行投資する分野がある。ソニーはエンターテインメント、パナソニックは介護やリフォーム、日立はIoT、NECは顔認証などの情報セキュリティーシステムやAI(人工知能)、富士通は企業のITシステム開発。不祥事で傷ついた東芝もフラッシュメモリーに希望を託している。

 第1四半期決算の特徴は、海外での販売がもともとふるわない企業も、決して販売不振ではなかった企業も、前年同期比で13円も円高が進行した為替の影響で業績悪化一色に染められたこと。そのため「今が雌伏の時」と我慢を強いられている企業がある。下半期にもし為替レートが円安に戻したら、そんな企業は急速に息を吹き返し、企業間の優勝劣敗がはっきりすることだろう。

 2017年3月期の通期業績見通しは、ソニー<6758>は5月24日に発表した通期見通しの売上高及び営業収入を4000億円下方修正して8.7%減の減収。営業利益2.0%増、税引前当期純利益11.3%減、最終当期純利益45.9%減で最終2ケタ減益という利益見通しは修正していない。予想年間配当は未定のままで、前期と同じ10円の中間配当予想だけを公表している。5月24日に発表した通期の想定為替レートはドル円110円前後、ユーロ円120円前後だったが、第2四半期以降の想定為替レートはドル円103円前後、ユーロ円114円前後とした。

 熊本地震が第1四半期の営業利益を342億円押し下げた。通期の営業利益への影響は当初1150億円と見込んでいたが、吉田憲一郎・副社長兼最高財務責任者(CFO)は「350億円程度縮小できる」と述べている。業績立て直しの「期待の星」画像センサーを生産する熊本工場でウエハー工程の復旧が進み、前倒しでフル稼働に入るため。それでも円高で半導体事業の収益は目減りする。7月、1991年にリチウムイオン電池を世界で初めて開発しながら低価格競争に巻き込まれて業績が悪化していた電池事業を、今年度末をメドに村田製作所<6981>に売却すると発表した。それによる損失は業績見通しには織り込んでいない。一方、音楽や映画などエンターテインメント事業は成長分野と位置づけており、英国ポンド安をチャンスとみて8月、英国の音楽ソフト会社の買収を発表した。

 パナソニック<6752>は今期から国際会計基準(IFRS)の任意適用を受けるため前期との単純比較はできないが、売上高は7兆6000億円、営業利益は3100億円、税引前利益は3000億円、当期純利益は1450億円を見込み、今回修正していない。予想年間配当は未定のまま。仮に米国会計基準で計算すれば最終利益は前期比30%減の1350億円。

 重点を置く「住宅と自動車」では今期、介護やリフォームなど住宅事業で先行投資を進めている。通期の想定為替レートはドル円115円、ユーロ円125円だが、経営管理はすでにドル円100円、ユーロ円115円を想定して行っているという。河井英明専務は、現在の円高水準が期末まで続くと仮定すると「新たに200億円程度の営業減益要因になる」と述べている。それに対応するにはさらなる構造改革が必要になる。

 シャープ<6753>は今期の業績見通しについては「鴻海精密工業グループとの戦略的提携に伴うシナジー効果等の具体的な算定が可能となり次第、速やかに公表いたします」と断り書きして公表していない。8月12日にホンハイの3888億円の出資が完了したと発表しているが、まだしばらく時間がかかる見込み。普通株の予想年間配当は前期と同じく無配のまま変わらない。

 日立<6501>は売上収益10.3%減、調整後営業利益14.9%減、継続事業税引前利益16.8%減、当期利益0.1%増、最終当期利益16.2%増の通期業績見通しに修正なし。予想年間配当は未定のまま。通期の想定為替レートはドル円110円のまま据え置き。西山光秋・最高財務責任者(CFO)は「想定より5円程度の円高なら自助努力で吸収できる」と話している。日立物流、日立キャピタルの売却、空調事業の再編、約3000人削減する人員リストラなど事業再構築の影響が営業減益の要因の3分の1を占め、為替の円高の影響も通期で出てくる見通しで、今期はガマンの年度。かたわらIoTなど「成長分野」「稼げる分野」「強みを活かせる分野」への経営資源の選択と集中、事業ポートフォリオの最適化を進めていく方針。