8月5日、総合商社大手6社の2016年4~6月期(第1四半期)決算が出揃った。
前期の2016年3月期に引き続き、第1四半期も原油、石炭、鉄鉱石、銅など資源価格の下落が続いた。4~6月期のWTI原油価格の期中平均は1バレル46ドルで、前年同期の58ドルと比べると約2割も安くなっている。石炭の原料炭価格も銅価格も約2割安い。市況の悪化が、資源事業への依存度の高い総合商社の業績に暗い影を落としている。
最終増益はエネルギー、金属の部門利益が大幅に増えた三菱商事1社だけで、丸紅などは31.8%の大幅最終減益だった。資源権益の取得時期が早いか遅いか、資産価値が低下した資源権益の減損損失の計上が早いか遅いか、あるいは一過性の利益の有無で明暗が分かれる一面もあった。
通期見通し、予想年間配当は6社とも修正していないが、下半期も資源価格の低迷、為替の円高はなお続くとみられ、資源分野に明るい希望が見えない。金融や機械、生活関連、情報・通信など非資源部門でどれだけ稼いでカバーできるかが、今期の大手商社の業績を左右しそうだ。
■資源分野の市況悪化に加え、円高で非資源分野も収益低下
2016年4~6月期(第1四半期)の実績は、三井物産<8031>は売上高20.5%減、税引前利益43.9%減。四半期利益38.6%減、最終四半期利益36.9%減と、前期のような最終赤字ではないものの2ケタ減収減益と悪い。最終利益の2017年3月期の通期見通しに対する進捗率は30.5%と悪くない。
赤字の前期に続いて原油価格などの資源安に直撃され、三井石油開発などのエネルギー事業は9割を超える大幅減益。大手商社で資源部門の比率が最も高いため、ダメージも大きい。一方、金属事業は鉄鉱石や銅の価格が低迷しても、オーストラリアの鉄鉱石事業の権益の取得時期が早くてコストが早く低下したことや、前期で減損損失の計上がすんでいたことで減価償却費負担が縮小し、22%の増益だった。
非資源分野は、不動産や食料品など生活産業部門は減益、化学品は不採算事業から撤退した効果が出て増益、機械・インフラ部門はブラジルのガス供給事業が寄与して増益。どの事業も為替の円高によって海外であげた収益が円ベースで目減りした。前年同期に不動産売却益、有価証券評価益を計上していたため、その反動減も大幅減益をもたらした。
三菱商事<8058>は収益16.1%減、税引前利益39.1%増、四半期利益33.3%増、最終四半期利益34.5%増の減収、2ケタ増益。
最終利益の2017年3月期の通期見通しに対する進捗率は40.3%もあった。
資源分野のエネルギー部門、金属部門はカナダのシェールガス事業などで権益売却益を計上し、オーストラリアの石炭開発子会社の黒字転換、資産の前倒し償却、生産コストの削減効果も寄与して大幅増益。権益売却益を含めると資源分野の純利益は前年同期比で2.4倍もあった。非資源分野は生活産業部門でノルウェーとチリのサケ・マス養殖会社が市況回復で黒字転換したほか、4月1日に伊藤ハムと米久が統合して伊藤ハム米久HD<2296>になり、それに伴う保有株式の売却益も計上して純利益は前年同期比18%増だった。東南アジアでの三菱自動車の販売は不祥事発覚後も落ち込んでいないという。
伊藤忠商事<8001>は収益12.1%減、営業利益3.8%増、税引前四半期利益21.6%減、四半期純利益40.4%減、最終四半期純利益39.8%減で減収、2ケタ最終減益。最終利益の2017年3月期の通期見通しに対する進捗率は20.8%。繊維など非資源事業を強化してきたので売上比率は低いものの、それでも資源分野は原油価格の下落、円高による海外収益の目減りで約9割の減益と悪かった。機械、食料の分野は増益。前年同期に北米の住宅建材販売事業の売却益を約530億円計上していたので、その反動も減益要因だった。鉢村剛最高財務責任者(CFO)は「前年同期の反動を除けば業績は堅調」と述べている。
住友商事<8053>は収益2.2%減、税引前利益65.6%減、四半期利益69.7%減、四半期利益72.4%減の減収、大幅減益。最終利益の2017年3月期の通期見通しに対する進捗率は17.4%。資源・エネルギー部門は銅やニッケルの価格の低迷に加え、マダガスカルのニッケル鉱山事業の赤字、ボリビアの銀、亜鉛、鉛鉱山に関わる税金関係の引当金108億円の計上もあって181億円の赤字に転落した。非資源部門も純利益約4割減とふるわない。金属事業は北米の石油・ガス掘削向けの鋼管事業が原油安で苦戦。船舶や中東の自動車販売も低迷したが、建機は健闘。全体的に円高に伴う海外収益の円ベースの目減りが収益の悪化に拍車をかけている。ケーブルテレビの子会社が増益になるなどメディア部門の業績は堅調だった。
丸紅<8002>は売上高16.5%減、営業利益38.2%減、税引前利益25.4%減、四半期利益31.9%減、最終四半期利益31.8%減の2ケタ減収減益と悪かった。それでも最終利益の2017年3月期の通期見通しに対する進捗率は37.2%ある。前年同期は83億円の黒字だったエネルギー・金属部門は、原油価格や銅価格の低下、為替の円高による収益の目減りで71億円の赤字に変わった。為替の円高は約2100億円の減収要因。最終利益を支えたのは北米の自動車関連事業の売却益。矢部延弘常務執行役員は資源事業について「石油で開発中の案件が3つほどあり、それが全て生産開始するまではエネルギー事業は非常に厳しい」と述べている。
双日<2768>は売上高13.0%減、営業利益7.8%増、税引前利益36.4%減、四半期利益22.3%減、最終四半期利益20.6%減の減収、最終2ケタ減益。最終利益の2017年3月期の通期見通しに対する進捗率は21.0%。原油や石炭など資源価格の低落、円高に伴う収益の円ベースでの目減りが響いてエネルギー事業、石炭・金属事業は赤字に転落した。船舶事業は減損損失を計上。穀物取引の減少で食品・アグリビジネス事業も減収だった。前年同期にフィリピンの自動車関連事業で持ち分法投資利益が増加したため、その反動減も減益要因になった。