日本社会の高齢化の進展とともに注目されるのが、介護事業。なかでも、高齢者の終の棲家となり得る、老人福祉施設の需要は高まっている。地方公共団体などが経営し、費用負担の軽い特別養護老人ホームに人気が集まる中で、その他の選択肢として民間企業の参入が続いているのが、有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)だ。今後も需要が期待される中で、両施設の経営業者の営業実態へ注目が集まっている。
そこで、帝国データバンクでは、自社データベース・信用調査報告書ファイル「CCR」(160万社収録)より、有料老人ホーム・サ高住を経営する企業を抽出。2015年(2015年1月期~2015年12月期)の売上高が判明した2514社の業種、業績動向、所在地、業歴などを分析した。
今回調査対象とした2514社は、有料老人ホーム事業、サ高住事業を主業とする「老人福祉事業者」1503社(構成比59.8%)および同事業を従業とする1011 社(構成比40.2%)で構成されている。
さらに2514社を法人格別にみると、「株式会社」が1336社(構成比53.1%)で最も多く、以下、「医療法人」(361社、同14.4%)、「有限会社」(308社、同12.3%)、「社会福祉法人」(244社、同9.7%)、「医療法人社団」(167社、同6.6%)と続いた。
また、有料老人ホーム事業、サ高住事業を従業とする1011社の主力事業を見ると、医療事業者を含む「サービス業」が728社で7割を占め、次いで不動産業(81社、構成比8.0%)、小売業(71社、同7.0%)が続いた。さらに業種の細分類を見てみると、一般病院が345社(構成比34.1%)でトップ、その後は老人保健施設(111社)、無床診療所(58社)、有床診療所(53社)と医療事業を行う企業が上位に名を連ねた。また、貸家業(32社)、木造建築工事業(14社)、不動産管理業(13社)など、有料老人ホームやサ高住の建物自体に関わる企業が施設の運営を行うケースも多いことがわかるとしている。
調査対象の2514社を年収入高別に比較すると「1億~10億円未満」の企業が1390社と最も多く、全体の半数以上を占めた。また、有料老人ホーム・サ高住を主業とする1503社の2015年の年収入高を見ると、同じく「1億~10億円未満」の企業が1012社で最多、約7割を占め、次いで「10億~100億円未満」(317 社、構成比21.1%)が続いた。
2011年の年収入高が判明した1270社の構成比と比較すると、2011年では 16.8%を占めていた「1億円未満」の構成比が9.9%に低下している。また、年ごとの収入高合計をその年の母数で割った平均年商の推移をみると、2011 年以降増加基調にあり、5年前と比べ 15.7%増加している。
2013年~2015年の年収入高が判明している 2481社について分析すると、2015年が前期比増収となった企業が1409社、減収企業は573社となった。また、増収企業の中で2014年も増収で2期連続増収となった企業は1055社で全体の42.5%を占めた。対して2期連続減収の企業は188社にとどまったとしている。(編集担当:慶尾六郎)