介護サービスに進出する住宅メーカー。その狙いと思惑は?

2016年08月14日 11:21

画・.認知症の方や家族と医療・介護機関との双方向支援ツール「わすれなひ_と」の臨床研究開始

高齢化率(総人口に占める割合)も25.1%と過去最高を記録した

 内閣府が公表している「平成26年版高齢社会白書」によると、日本の総人口は、2013年10月1日現在で1億2730万人と、2011年から3年連続の減少となっている。また、65歳以上の高齢者人口は過去最高の3190万人。高齢化率(総人口に占める割合)も25.1%と過去最高を記録した。長寿を喜ぶべきという意見もあろうが、1950年頃の高齢者人口は総人口のわずか5%にも満たなかったことを考えると、異様な加速度で高齢化が進んでいることが分かり、喜んでばかりもいられない。

 少子高齢化問題の解決が日本社会の急務であることは今さら言うまでもないが、問題は、たとえ今すぐ「少子化」に歯止めがかかったとしても、直面している高齢者の増加問題については待ったなしの状況に変わりはないということだ。

 そんな中、不動産会社や住宅メーカーが相次いで介護サービスに進出している。高齢者人口が増加だけを見ると、介護サービスは成長産業にみえる。でも、実際は介護に携わる人材の不足や労働に見合わない介護報酬など、厳しいのが現状だ。それなのにどうして、介護サービスに進出する企業が後をたたないのだろう。

 その理由の一つは「賃貸」だ。通常、土地代の安い第一種低層住居専用地域は規制が厳しく賃貸住宅を建設することが難しいが、老人ホームや身体障碍者福祉ホームならば第一種低層住居専用地域でも建築可能だ。土地代に圧迫されないので利回りも確保され、しかも通常の賃貸に比べて需要もあるので賃貸事業を展開するには申し分ない。

 また、もう一つの理由として考えられるのは、そのメーカーもしくはメーカーの所属するグループ企業がワンストップで運営できる場合だ。例えば、パナソニックグループのパナソニック エイジフリー株式会社が運営する在宅介護サービス拠点「パナソニック エイジフリーケアセンター岐阜茜部」が良い事例だ。同施設は、パナホーム株式会社がオーナー開発と建物の設計・施工を請負い、今年4月にオープンした。パナホームはこれまで、全国で高齢者住宅や介護施設など累計1500棟以上の建築実績をもち、そこで培った高いプランニング力やノウハウを活かしたものだ。そして、パナソニックグループの最新設備が充実しており、高い介護サービスを提供している。今回のようなパナホームの請負による「パナソニック エイジフリーケアセンター」は中部地区初だが、今後の展開が期待されている。

 日本の高齢化はまだ始まったばかりだ。これからますます、高齢化が加速していくことは間違いない。今、世間では待機児童の問題が取りざたされているが、いずれ近い将来、待機高齢者なんて言葉が生まれるかもしれない。老後を快適に過ごすためにも「パナソニック エイジフリーケアセンター」のような施設が増えてくれることを願う。(編集担当:藤原伊織)