8月26日時点の需給データは、信用買い残は8月19日時点から211億円増の2兆2528億円で2週連続の増加。信用倍率(貸借倍率)は3.33倍から3.15倍へ2週ぶりに低下した。信用評価損益率は-15.03から-15.50へ0.47ポイント悪化し、2週連続の悪化だった。裁定買い残は735億円増の6080 億円で2週連続の増だが、依然として低水準。
東証が発表した8月22~26日の投資主体別株式売買動向によると、外国人は2週ぶりの買い越しで買越額は1713億円。個人は2週連続の買い越しだが買越額は186億円と少ない。信託銀行は6週連続の買い越しで買越額は653億円。「需給三国志」で外国人、個人、日銀のETF買いがバックにある信託銀行が揃って買い越しという珍しい週だった。売り越しは生・損保、銀行、投資信託。
前々週は連日の40%台で、8月26日には45%に迫って異常に熱かったカラ売り比率だが、前週はジャクソンホールからロッキー山脈の涼しい風が入ってクールダウンした。8月29日が36.2%、30日が40.4%、31日が36.3%、9月1日が36.6%、2日が38.3%だった。日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)の9月2日終値は24.01。前週末8月26日終値23.78より0.23高く、恐怖指数は8月第2週の20割れから、週を追うごとに徐々に上昇している。
9月2日、アメリカの雇用統計が発表された。非農業部門雇用者数は+15.1万人で市場予測の+18万人を下回った。完全失業率は4.9%で横ばい。平均時給は+2.4%の25.73ドルでやや鈍化したが、コスト高要因として企業業績には依然、脅威。マーケットは「年内はともかく9月利上げはなさそうだ」という見方で「ゴルディロックス」状態が継続し2日のNYダウは72ドル高で、NASDAQもプラスだった。
2日のNY時間の為替レートはドル円が雇用統計発表直後に103円割れした後に104円台に乗せる乱高下で、3日朝方は103円台後半、ユーロ円は115円台後半。円安に反応してCME先物清算値は17130円、大阪先物夜間取引終値は17120円だった。
とはいえ、先物の取引終了後に為替は円高方向に戻しており、5日始値が17100円超えで始まるかどうかは微妙。テクニカルでは、そこまでいくと200日移動平均の17042円もボリンジャーバンドの25日+2σの17052円も超えており、オシレーター系指標に「買われすぎ」シグナルが2個もついている中、その水準を安定的に維持できるとは考えにくい。上昇時の「踏み上げターボ」にエネルギーを供給するカラ売り比率も前週は低下して、2日は40%を下回っている。
今週は「高値覚え」で先物が17100円を超えて現物がそれにつられる時間帯はあっても、連日、17000円台に安定して乗せられるほどの強さはないだろう。最大の理由は「メジャーSQ週」だから。SQ週の火曜、水曜は下げやすい「鬼門」だが、9月は先物も含んだ3ヵ月ごとのメジャーSQなので、鬼の金棒のスイングはメジャー級の鋭さになり、破壊力が倍加する。
では、どこまで下げるのか。一つのメドになりそうなのが前回のメジャーSQ、6月SQ値の16639円で、25日移動平均16612円もそのわずか27円下にある。鬼になって先物を売る海外投資家も、9月SQ値が6月SQ値を下回るのは、やはり抵抗があるだろう。また、ザラ場でそれより下になるとマーケットは日銀のETF買いを意識するはずだ。
しかし日銀に期待しすぎてはいけない。需給要因で前場に大きく下げてしまうと、日銀のETF買いが入っても下げ止まる程度で、プラスまで一気に挽回する「特効薬」のような効果はありえない。それは、後場に日銀買い707億円が入っても逆に下げ幅を拡大し、その無力ぶりを露呈した前々週8月26日で実証済みだ。日銀買いは「火消し」にはなるが、火事の前の状態に戻してはくれない。消防士は、大工さんではない。
今週、日経平均17000円台への定着を阻むかもしれない気になる要素として「長期金利の上昇」もあえて、挙げておきたい。2日後場に17000円に接近できなかった理由の一つでもあるが、今週はそれがマーケットのマインドを冷やしかねず、注意が必要だ。
日本は昔から銀行系の為替、債券のアナリストの発言力が強く、その意味ではNYよりもロンドンに近い。そんな人が朝の経済ニュース番組に出てきて、「ついにやってきた!長期金利の上昇」「国債を大量に保有する銀行の損益が悪化する!」「政府の国債発行計画に支障が出る!」などと、まるでこの世の終わりが来るかのようにワーワー騒いだら、株式市場にも悪影響が及びかねない。
ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは16600~17100円とみる。
週末9日の「メジャーSQ」前に日経平均先物の9月限から12月限への「ロールオーバー」(期先物へのポジション乗り換え)が順調に進めばSQ週の値動きは安定するが、モタモタすれば先物の仕掛け売りが出やすく不安定になる。その影響を受けやすい「危険日」がSQ週の火曜、水曜で、今週の6、7日は注意してもしすぎることはない。株式市場では、説明できない上昇はあっても、説明できない下落はない。「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」(松浦静山/野村克也)(編集担当:寺尾淳)