広がる塩麹ブームは伝統食品回帰への端緒となるのか

2012年04月23日 11:00

 富士経済によると、2011年見込みが1兆7744億円、2012年予測が1兆7797億円と、衰えを見せない健康美容食品市場。そんな健康美容食品市場内で今、塩麹が大きなブームとなっており、百貨店やスーパーでは専用コーナーを設置、書店でも関連本の売れ行きが好調だという。

 塩麹とは、麹に塩と水を加えて1週間ほど常温で発酵させたもの。江戸時代の文献にも記述があるという伝統食品の一つである。安心・簡単に発酵食品を取り入れることができる上、食材のたんぱく質などを分解し、食感をやわらかくしたり、旨みをアップしたり、消化吸収を助けるなど、酵素ならではの働きが、女性を中心に人気となっている。

 健康食品や医薬品などをインターネットで販売するケンコーコムが発表したところによると、運営サイトでの塩麹関連商品の販売開始は2011年9月であるものの、2012年2月の「塩麹」の注文数は2011年12月に比べて約24倍と爆発的に拡大。また、2012年3月には、月間売れ筋ランキングで長期間にわたり総合1位に君臨していたミネラルウォーターを抜き、塩麹が第1位になったという。現在では11商品に取り扱いが広がり、健康成分別の売上でも酵素がランキングを上げているようである。

 今月には、味噌製品の製造販売を行うハナマルキが、春の新商品として「塩こうじ」を発売。2012年4月16日からの出荷で、売上げは初年度3億円、3年目にはシリーズ累計で年間10億円を見込む程、今後の伸長が期待される商品となっている。その他、マルコメからは「塩糀スープ春雨」や「塩麹スープ鳥団子」などがカップスープとして販売されていたり、漬物の素を販売する会社からは粉末タイプの塩麹が販売されるなど、元来用途の幅広い塩麹が、瓶詰・チューブ・粉末・インスタント食品など様々なタイプで市場に登場している。

 万能調味料として方々で紹介され、味噌などの発酵食品を扱う企業を中心に製品化が続々となされている塩麹。外食産業でも塩麹を用いたメニューが増えており、このブームはしばらく続きそうである。サプリメントなど気軽に目当ての成分を摂取できるものもよいが、錠剤や粉末などでの摂取が薬を服用するようで抵抗のある方もいるであろう。しかし、伝統に裏打ちされた食品であり、調味料として利用出来るのであれば、日々の食事のアクセントとして取り入れやすいのではないだろうか。温故知新。塩麹を機に、最新の研究から生まれ次々とブームが来ては去る成分を追うのではなく、日本で古くから食されてきた健康食品に目を向けてみてはいかがであろう。受け継がれてきた食品にはそれなりの理由があるということを、色々と発見できるかもしれない。