総合不動産サービスのJLLは、物流不動産における賃貸市場を分析したレポート「首都圏と関西の物流不動産賃貸市場」を発刊した。このレポートでは、今までに発刊した首都圏と関西における物流不動産賃貸市場に関する市況や見通しについて、再度分析を行い、まとめている。
それによると、首都圏所在の大型先進物流施設の新規供給量は、2016年に32.6万坪、2017年から2020年の4年間の合計で123万坪となり、年平均で31万坪が新規供給されると予想している。これは2006年から2015年までの年平均17万坪に比べ、80%強多い供給となる。インターネット通販や3PLの旺盛な需要により、ディベロッパーや投資家が新規開発に積極的なことが背景となっている。2020年末での市場規模は、2015年末比1.8倍の350万坪と予想している。
首都圏の先進大型物流施設の賃料は、2016年以降堅調に推移し、2020年までの5年間の上昇率は合計4.4%となると予想している。2020年の月額賃料予測は、直近のピークである2007年の坪当たり4,756円を10%近く下回るものの、市場自体の構造が大きく変化し、経済合理性やマーケットメカニズムに基づいた形で、確立期から成長期入りとなる可能性が高いとみており、中長期的に堅調に推移するとの見方は変わらないという。
インターネット通販の売上拡大による物流不動産の新規需要について、関東地方では2020年までの新規需要は年平均で15万坪と想定している。インターネット通販の拡大基盤はより堅固になっており、プレーヤーの増加や、消費者へのアプローチやビジネスモデルも多様化し、裾野が急拡大していることから、新規供給の過半スペースはインターネット通販の拡大によって吸収されると想定できる見方は変わらないという。また、アウトバウンドEコマース(越境EC)も本格的に立ち上がり始めており、越境EC事業者からの物流施設への需要拡大も期待できるとしている。
関西における大型先進物流施設の新規供給量は、2017年から2020年までの4年間で合計62.7万坪、年平均で15.7万坪と予想している。2004年から2016年までの年平均供給量と比べると2.9倍という高い水準の供給となる。2020年末での合計床面積は、2015年末比2.3倍の134万坪と予想している。市場規模でみると、首都圏の同床面積比で40%の水準となるという。
関西における先進大型物流施設の賃料上昇率は、2016年以降2020年までの5年間で合計3.5%と予想している。インターネット通販を中心に旺盛な需要が予想されるものの、2017年から2018年の供給急増を背景に、2017年年央から2018年は空室率が10%台後半まで上昇すると予測されることから、賃料は踊り場となり、その後は上昇基調に戻ると分析している。
首都圏と同様に、前回の上昇率予測6.2%よりも今回の予測3.5%は低くなっている。関西内陸部における先進大型物流施設の新規供給はごく最近始まったばかりで、その供給量が2016年から2018年にかけて大きく伸び、新規プロジェクトにはテナントからの需要も強いことから、需要は全体の過半を占めるとみられている。一方、それ以外のエリアで新規需要がやや低調な状況が一部に出てきており、この部分を保守的に賃料予測に織り込んだことが、賃料上昇率を若干引き下げる要因となっているとしている。(編集担当:慶尾六郎)