今回のニュースのポイント
仕入価格は上昇継続:大企業の仕入価格判断DIは製造・非製造ともに46と極めて高く、原材料やエネルギー負担が依然として重い状態です。
販売価格も上昇:販売価格判断DIも製造業で28、非製造業で32と上昇超にありますが、仕入価格の上昇幅には及んでいません。
企業は人手不足・コスト対応に追われる:雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)は全規模全産業でマイナス38と、深刻な人手不足超の状態が続いています。
景気より「採算」重視へ:設備投資計画はプラスを維持するものの、2026年度は全規模全産業で1.3%増と、2025年度の7.9%増から大幅に鈍化する見通しです。
企業は今、景気よりもコストに神経をとがらせています。今回の短観は、賃上げや採用環境に直結する「企業の投資・雇用姿勢」を示す内容となりました。日銀短観は、全国の9,209社を対象とした調査であり、経営者が今をどう感じ、未来をどう描いているかを示す重要な経済指標です。今回の2026年3月調査の結果を読み解くと、「足元は底堅いが、先行きには慎重姿勢が見られる」という企業の内実が見えてきます 。この構図は、今回の調査でより鮮明となりました。
足元の数字を見ると、大企業製造業の業況判断DIはプラス17となり、前回調査の16から改善しました 。非製造業のDIもプラス36と前回と同水準を維持しています。業種別では、製造業で生産用機械(26)などの加工業種が牽引し、非製造業では建設(55)や不動産(55)といった内需関連が「良い」と回答しています。
企業心理の本質は、業況だけでなく価格判断DIにも表れています。大企業の仕入価格判断DIは製造・非製造ともに46と高水準を維持しており、コスト負担の根強さが示されています。これに対し、販売価格判断DIは製造業で28、非製造業で32にとどまっており、コスト上昇分を十分には価格転嫁できていない可能性がうかがえます。これは採算を重視せざるを得ない企業の投資や賃上げ判断を慎重にさせているとみられます。
企業が慎重になる理由は構造的な重石にあります。大企業の先行きDIは製造業で14、非製造業で29と、足元から明確に悪化する見通しです。想定為替レートが2026年度通期で1ドル=150.09円と円安水準に置かれる中、輸入コストのボラティリティへの警戒感が解けていません。また、人手不足も深刻で、コストの見通しが不透明なことが、投資・採用への慎重なスタンスを招いています。
設備投資計画にも変化が見られます。2025年度計画は全規模全産業で前年度比7.9%増と高い伸びでしたが、2026年度は1.3%増へと大幅に鈍化する計画です。大企業製造業でも2.7%増にとどまっており、コスト環境を見極めつつ利益確保を優先する、やや守りを意識した投資スタンスもうかがえます。ソフトウェア投資などはプラスを維持していますが、効率化や選別を意識した投資内容にシフトしています。
マクロ統計では景況感はプラスで雇用は不足していますが、実感が乏しい理由は利益余力のばらつきにあります。業種や企業規模によってコスト負担や利益余力に大きな差がある中で、将来の減速を見越し、賃上げや採用のペースについて慎重に考える企業も少なくありません。この守りの姿勢が、経済全体の循環を鈍らせる要因となっています。
今後は、賃上げの持続性や企業の投資姿勢が維持されるかが焦点となります。次回の短観で仕入価格DIが落ち着き、販売価格との差が縮まるかどうかも注目点です。また、設備投資計画が下方修正されないか、そして物価上昇を上回る賃上げが持続できるかが分岐点となります。短観の数字を継続的に追うことで、日本経済の変調を早期に捉える手がかりとなります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













