自閉症の重症度軽減 親の早期介入に長期的な有効性

2016年11月23日 11:05

 自閉症含む発達障害児の数は近年増加傾向にある。文部科学省の調査によれば、必要に応じて別教室で指導を受ける「通級指導」の対象者が2015年度に初めて9万人を超え、この9年間で2.2倍に増加したことがわかっている。通級指導を受けている児童を障害別に見ると、言語障害が39.1%、注意欠陥多動性障害(ADHD)が16.2%、自閉症が15.7%、学習障害(LD)が14.6%、情緒障害が11.8%、難聴が2.3%、弱視が0.2%と、言語障害を除く上位4位が発達障害となっている。通級指導の普及や診断基準の変化などもあるため、この数字が一概に発達障害児の数の増加を示すものではないが、近年増加している高齢出産は、自閉症出産のリスクが増す(父親が50歳以上で29歳以下の5.75倍)要因となっている。

 こうしたなか、英マンチェスター大学のジョナサン・グリーン医師らが、自閉症児への親の早期介入が親子のコミュニケーションに与える影響について研究を実施した。対象は2~4歳11カ月の自閉症の子ども152人。同研究では、対象児の半数の親に、子どもとのコミュニケーション手法や観察方法、子どもに対する責任感などを学ぶ1回2時間の教育プログラムを6カ月間受講してもらい、それを活かして1日20~30分ほど子どもと接してもらった。教育プログラムのもとに子どもに接した早期介入グループと、通常治療グループで自閉症診断検査(ADOS)により10段階評価(スコアが高いほど重症度が高い)で重症度を比較。長期(中央値:5.75年)にわたる追跡調査を実施し最終的に対象者121人ぶんのデータを得た。

 調査開始時の重症度スコアは、早期介入グループが8.0、通常治療グループが7.9と差が見られなかったものの、追跡調査終了時には早期介入グループが7.3、通常治療グループが7.8と、早期介入グループで低下していた。また、重症度スコアが8~10と高い子どもの割合では、早期介入グループでは約46%、これに対して通常治療グループで約63%との結果となった。同研究で効果が見られたのは、自閉症の三大症状のうち「人との関わり」及び「こだわり」に関する項目で、早期介入グループでは6年近くにわたる長期的な効果の継続が見られた。三大症状のうちの「言葉の発達」に関しては両グループで差は見られなかったとのこと。

 自閉症は治療する疾患ではなく、コミュニケーションなど環境を改善することで問題行動や情緒的な障害を改善することができる。今回の研究結果からも親への早期介入を促す教育の普及が望まれる。(編集担当:久保田雄城)