アスタキサンチンは調整期を乗り越えて成熟期へと移行できるか

2012年04月09日 11:00

 一時期の低迷期を乗り越え、再び拡大傾向にあるというサプリメント市場。昨年のレスベラトロールのように、毎年のように新しい注目成分が登場しブームとなる一方、数年で市場から姿を消す成分も少なくない。

 多くの成分は、立上期から成長期を経て調整期、成熟期という経路を辿る。そのうち、調整期の段階で一定の需要が確立出来なかった成分が市場から姿を消し、いつの間にか忘れ去られるという結果となる。その為、成長のピークを越えた成分に対し、調整期を乗り越えさせ、成熟期にまで育てようと各メーカーが様々な施策を試みている。

 現在、成長期から調整期に向かいつつある成分の一つとして、アスタキサンチンが挙げられるであろう。アスタキサンチンとはカロテノイドの一種で、エビやカニなどの甲殻類や、サケ・マスの身などに含まれる天然色素。一般に、抗酸化作用が期待されてブームとなった成分である。このアスタキサンチンが、現在では主成分のサプリメントとしてではなく、他の成分が主であるサプリメントに配合されたり、飲料に配合されたりと、市場確立に向けた商品展開がなされているのである。

 他の成分が主であるサプリメントへの配合で多く見られるのが、昨年からブームとなっているレスベラトロールのサプリメントへの配合である。今年1月から発売を開始した富士フィルムのマルチサプリメント「レスベラトロールinオキシバリア」や、3月16日から小林製薬が通信販売限定で販売を開始した「レスベラトロール」などにアスタキサンチンが配合されており、今現在ブームとなっている成分と抱き合わせる形で市場の確立が図られている。

 また、コーセーは、化粧品専門ブランド「プレディア」から発売の薬用美白美容液「プレディア ホワイト バイタリューション」に、コウジ酸とともにアスタキサンチンを配合。飲料メーカーのポッカも、美容意識の高い働く女性をターゲットとした、4月から発売しているキレイ系果汁飲料「ASHITA KIREI water(アシタキレイウォーター)」にアスタキサンチンを配合し、なお一層の認知度向上とその定着を図っている。

 富士化学工業の研究によると、育毛促進効果や毛細血管の退行予防効果が確認されたというアスタキサンチン。こういったことを受けた同社は、2014年にアスタキサンチンを製造する新工場を設け、生産能力を8倍に引き上げ、昨年度20億円の売上高を2020年には100億円を目指すという。また、グローバルインフォメーションの報告書では、2010年に2億2600万米ドルの市場が、年平均成長率1.4%で推移し、2018年には2億5300万米ドルになると予測されている。まだまだ成長期にあるとようにも見えるアスタキサンチンであるが、近時は話題に上ることも減り、日本でのブームは去りつつあることは否めないであろう。この成分を一時期のブームに終わらせずに成熟期へと移行させ、一定の市場を確保することができるのか、ここ数年が勝負の年と言えるのかもしれない。