AUDI、2016年をもってWECから撤退、その理由と18年間の参戦の意味

2017年01月04日 16:11

Audi_WEC

2012年から3年間、ディーゼルエンジンとモーターを組み合わせたアウディR18 e-tron Quattro(写真)が、ハイブリッド車によるルマン初優勝と3連勝を達成し、3種のパワートレーンで3年連続優勝を記録。これまでに18大会連続で表彰台の一角を占め、13勝を獲得した

 モータースポーツを“走る実験室”と位置づけるアウディは創業以来、さまざまなカテゴリーに挑み、革新技術を磨き上げてきた。独自の4WDシステム、クワトロの熟成も、1981年から参戦したWRC(世界ラリー選手権)で磨き上げた。

 1999年からWEC(世界耐久選手権)参戦し、偉大な結果を残した。WECその1戦であるルマン24時間レースにおいても、記録にも記憶にも残る、大きな成果を挙げてきた。しかし、2016年をもって、アウディはこのシリーズを卒業する。

 憶測、あるいは噂の域を出ないが、今回のアウディの撤退は、フォルクスワーゲン(VW)に端を発する欧州でのディーゼルエンジン離れが影響しているかもしれない。アウディはWECに唯一ディーゼルハイブリッド車で参戦していたが、フォルクスワーゲンのディーゼルエンジンの排ガス不正問題が発覚して以降、グループの財政は逼迫している。

 VW、アウディともに量産車でも今後ディーゼルよりもEVに注力するとしている。さらに、ドイツ議会は2030年までに内燃機関を搭載するクルマの販売を禁止する方針を打ち出した。アウディはディーゼルハイブリッドを凍結、WEC参戦は、グループの一員であるポルシェに任せると判断したようだ。

 2016年シーズンで終了したアウディWECの歴史をふり返る。

 1999年、アウディが初めて参戦したルマンは、最多勝チームであるポルシェに挑んだレースだった。そして、このレースでBMWが史上唯一の優勝を遂げた。全員が日本人ドライバーというトヨタが2位を獲得した記憶に残るレースとなった。初参戦したアウディR8も3位に入り、早くもルマンの表彰台を獲得。翌年は、早くも1-2-3を獲得する完全優勝を成し遂げた。

 現在、アウディの主力ガソリンエンジンであるTFSIエンジンを搭載したAudi R8が、1-2フィニッシュを遂げたのは2001年。低燃費と高性能を両立させるTFSI技術の実力は長時間のレースで遺憾なく発揮された。豪雨の中で出走した48台中、28台がリタイヤするという過酷なレースを制した。翌2002年には1-2-3の完全優勝を遂げる。

 2006年、WECにアウディは画期的なマシンを投入した。直噴ディーゼルターボエンジンを搭載するアウディR10 TDIでルマンに挑戦。高回転に向かないため不利という下馬評を覆し、ディーゼル車による初優勝を遂げると、2008年まで3年連続優勝を果たした。

 2010年に優勝したアウディR15 TDIは、39年ぶりに24時間の総走行距離記録を更新。2011年のアウディR18 TDIも、2位のプジョーとの差がわずか14秒足らずというデッドヒートを制し優勝した。

 2012年から3年間、ディーゼルエンジンとモーターを組み合わせたアウディR18 e-tron quattroが、ハイブリッド車によるルマン初優勝、そして3連勝を達成し、3種のパワートレーンで3年連続優勝を記録。これまでに18大会連続で表彰台の一角を占め、13勝を獲得した。

 そしてアウディは、この世界最高峰の耐久レースWECを卒業し、来年から「電気自動車のF1」と呼ばれるスプリントレースのフォーミュラEに参戦する。(編集担当:吉田恒)