「フォーミュラE」シーズン3が香港で開幕、日本のエレクトロニクス企業2社、オフィシャルパートナーに

2016年10月22日 20:18

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京都の半導体メーカー・ロームが、3年間のテクノロジー・パートナーシップ契約を締結した「ヴェンチュリー・フォーミュラEチーム(Venturi Formula E Team)」のマシン

 フォーミュラカーのレースといえば最高峰のカテゴリー「F1GP」を思い浮かべる。しかし、2014年9月から化石燃料を使わずに走る電気自動車(EV)のレースが開催され、人気が上昇してきている。電気自動車(EV)のレースは「フォーミュラE」と呼ばれ、国際自動車連盟(FIA)が創設し、フォーミュラEホールディングスが運営する国際レースだ。バッテリーの電力でモーター駆動するため、エンジン音が静寂であり、極めて静かな環境でレースが実施される。その特徴ゆえ、レースはモナコやパリ、ニューヨークなど、すべて市街地の公道コースで開催されることが魅力のひとつでもある。
 
 3シーズン目を迎えた今期「2016-2017 フォーミュラE」は、10月9日に香港で第1戦が開催、10チーム・全シーズン10戦の幕が切って落とされた。この10チーム中2チームで日本メーカーがオフィシャル技術パートナーとして参加している。

 ひとつは英国で大々的に記者発表を行なったジャガーチーム。日本のパナソニック<6752>がタイトルスポンサーとなり正式に「パナソニック ジャガーレーシング」として発足した。パナソニックとのパートナーシップに関してジャガーは、エレクトロニクスの最先端の企業パナソニックとプレミアム自動車メーカーでもあるジャガーレーシングが結びつくことで、パフォーマンス環境の限界を後押しすることになると発表した。

 また、京都の半導体メーカー、ローム<6963>もヴェンチュリー・フォーミュラEチーム(Venturi Formula E Team)と3年間のテクノロジー・パートナーシップ契約を締結した。同社は、マシン駆動の中核を担うインバータ部分に世界最先端のパワー半導体であるシリコンカーバイド(SiC/炭化ケイ素)パワーデバイスを提供し、マシンの小型・軽量化、高効率化をサポートする。

 ヴェンチュリー・サイドでは、「フォーミュラEの本質は、パワーマネージメントに尽きる。SiCパワーデバイス領域におけるリーディングカンパニーであるロームとのパートナーシップによって、我々のマシンの全ての電気系統が進化し、そしてモーターをさらに加速することができる」とコメントしている。

 パナソニックやロームのような日本のエレクトロニクス先端企業の技術が「フォーミュラE」のパワーユニット開発の根本であるパワーマネージメント分野で重宝されているのには理由がある。それは「フォーミュラE」のパワーユニット開発において、パワーエレクトロニクスという技術開発が重要であるからだ。これは一般的に半導体素子を用いた電力変換や電力開閉に関する技術を扱う工学であると定義されている分野で、「フォーミュラE」においては、パワーエレクトロニクスよる加速時のパワーマネージメント、つまりモーター制御が最大のポイントとなる。さらに、減速時にブレーキで熱エネルギーに変換して減速していたが、その運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回生する技術も必要である。

 搭載電池に容量がある「フォーミュラE」レースでは、レースの途中で2台目のマシンに乗り換えなくてはならないため、どれだけパワーマネージメントを効率よくできるのかがレースの勝負の分かれ目になるとも言われている。

 今後はパワートレーンだけでなく、バッテリーなども含めた更なる設計の自由度がアップすると言われている。また、シーズン5となる2018-2019年には日本で「フォーミュラE」開催との噂もある。日本のホンダや日産も参戦を匂わせており、徐々に国内でも人気が高まりそうな雰囲気である。

 ちなみに開幕戦決勝結果は、「パナソニック ジャガーレーシング」が12位とリタイヤ、ヴェンチュリー・フォーミュラEが9位、10位だった。今後の活躍に期待をしたい。(編集担当:吉田恒)