アウディがモータースポーツ参戦における方針・戦略の大転換ともいえる方針を発表した。これまで、アウディのモータースポーツ参戦での最高峰だった「FIA WEC(世界耐久選手権)」への参戦は今季で終了し、電気自動車のフォーミュラカーレース「Formula E」に来年度から参戦するとしたのだ。
アウディが18年間にわたって、ル・マン プロトタイプ レーシングで積極的に耐久レースに参加してきた。その「FIA WEC」から撤退する。偉大な成功の時代の終焉といえる。これまでの18年でアウディは、ル・マン24時間レースで13度の勝利を挙げた。2001年にTFSIガソリンエンジンでの最初の勝利を挙げ、2006年にはTDIディーゼルターボエンジンを搭載したレースカーでル・マン史上初の優勝を獲得。さらに2012年にはハイブリッドのパワートレーンを搭載したレースカーで最初の優勝を達成した。これまで参戦した185のレースにおいて、アウディは、計106回の優勝、80回のポールポジション、94回のファステストラップを記録してきた。
ハイブリッドのドライブシステムを用いたAudi R18 e-tron quattroは、2度のFIA世界耐久選手権(WEC)のタイトルを獲得した。また、アウディは、2000年から2008年まで9年連続で、アメリカン ル・マン シリーズ(ALMS)のタイトルを獲得した。
アウディAG取締役会会長のルパート・シュタートラー氏は、アウディのモータースポーツ部門で働く300名の従業員に対して、アウディが今後も競争力を維持し続けるため、課題に注力することが重要であることから、今回の戦略的決断が取締役会で下されたと説明。
シュタートラー氏は、「将来を見据え、電気自動車によるレースに参戦することにしました。アウディのラインアップにおいて、今後電気自動車の比率が次第に高くなっていきます。アウディの先進技術を代表するモータースポーツのレースカーは、その技術力を示すものでければなりません」とは述べたとされる。
電気自動車による最初のレースシリーズであるフォーミュラEは、2018年から完全なバッテリー駆動による電気自動車をラインアップに加えるアウディのブランド戦略に完璧にマッチしたセグメントだとしている。FIAフォーミュラEへのワークスチームとしての参戦は、2017-2018シーズンから開始される予定だ。そのためにアウディは、現行の2016-2017シーズンから、チームABTシェフラー・アウディスポーツとのこれまで以上に協力関係を強化。アウディのワークスチームとしてのフル参戦に向けて、現在技術開発にも積極的に参加しているという。(編集担当:吉田恒)