メンデルの「優性の法則」の謎を解くカギ、優劣関係決定の仕組みが新たに解明

2017年01月19日 09:16

画.メンデルの「優性の法則」の謎を解くカギ、優劣関係決定の仕組みが新たに解明

東北大学らの研究グループは、「両親からの遺伝子を受け取るにも関わらず、子供に発現する性質は一方のもののみ」というメンデルの「優性の法則」として知られる現象について、優劣関係を決定する新たな仕組みを世界で初めて明らかにしたと発表した。

 東北大学らの研究グループは、「両親からの遺伝子を受け取るにも関わらず、子供に発現する性質は一方のもののみ」というメンデルの「優性の法則」として知られる現象について、優劣関係を決定する新たな仕組みを世界で初めて明らかにしたと発表した。

 同研究グループは、優劣の階層が複数ある遺伝子(SP11)を持つ在来ナタネを対象に、遺伝の優劣決定の仕組みの解明に取り組んだ。優性の遺伝子から作られるシンプルな構成の分子(低分子RNA)が、劣性および比較的劣勢の遺伝子との類似性を示しているため攻撃目標となること、攻撃を受けた劣勢遺伝子ではカギがかかったように制御され発現が阻害されることを見出した。さらには、低分子RNAを構成する塩基の配列が変化することによって、特定の遺伝子同士で複雑な優劣関係が生み出されることを明らかにした。

 遺伝子の優劣性を決定する因子が進化する可能性については、約100年前に遺伝学者間で論争を巻き起こしていたが、同研究では仮説の証明および因子の特定が実現したかたちだw。同研究の発展により有用な遺伝子を働かせ、有害な遺伝子の働きを抑えるといった技術への応用が可能。植物育種の分野でも活用が期待される。

 遺伝子機能の解明に関しては、近年のゲノム編集技術の登場によりそちらの分野からの研究が進んでいる。しかし、最も広く利用されているゲノム編集技術「CRISPR/Cas9(クリスパー/キャスナイン)システム」ですら、予想外のタンパク質発現により父方由来遺伝子および母方由来遺伝子の翻訳がどちらも妨げられるような、意図しない現象が、最近になって発見されている。研究によりエビデンスが蓄積され、解明が進んだと考えられてきた遺伝子発現の根本的な機能ですら全く新しい機構が発見されることからもわかるように、遺伝子機能に関してはまだまだ常識が塗り替えられる可能性がある。ひとつの新たな発見により周辺分野での応用が広がる分野でもあるため、今後の研究動向に注目していきたい。(編集担当:久保田雄城)