【今週の展望】ドル円112円、日経平均18800円を防衛できるか?

2017年02月05日 20:08

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何をするかわからない「トランプ恐怖症」は、10日の日米首脳会談で一応決着がつく。決算発表も、東芝を含めて15日で終わる。その後に春めくのを願いつつ、春を待つ心。

 前週5日間のカラ売り比率は、1月30日が38.9%、31日が39.3%、2月1日が38.9%、2日が41.7%、3日が42.0%。3営業日ぶりに106円高と反発した2月1日は最少になり、それを233円安で「倍返し」された2月2日と、日銀の国債買入オペをネタに為替市場と合わせた投機的な売買に蹂躙された3日は40%を超えて需給の悪化が反映されるという、実にわかりやすい結果だった。日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)の2月3日終値は20.68で、1月27日終値の18.34から2.34ポイント上昇。トランプ大統領の大統領令による「入国制限」の騒動で世界のマーケットが萎縮したリスクオフが反映し、これまたわかりやすい週だった。

 3日に発表されたアメリカの1月の雇用統計は、非農業部門雇用者数の伸びは22.7万人で市場予測の17万人を上回り、完全失業率は4.8%で市場予測の4.7%よりも悪かった。平均時給は前月比+0.1%で市場予測の+0.3%よりも上昇が鈍い。解釈が分かれそうだが、発表直後の為替市場ではドルが売られた。3日のヨーロッパ市場は揃って上昇。ユーロ圏の小売売上高は前月比-0.3%でプラスの市場予測に反しマイナスで2ヵ月連続の低下。雇用統計以外のアメリカの指標は、ISM非製造業景気指数は56.5で前月比-0.1ポイント、12月の製造業新規受注は+1.3%で2年ぶりの高水準だが、どちらも市場予測を下回った。NY市場は雇用統計をいい方に解釈し、金融セクターが買われてダウ終値は186ドル高で5営業日ぶりに2万ドルの大台回復。原油先物価格は小幅高で終値53ドル台、金先物価格は小幅続伸。ロンドン時間にドル円113円台まで円安が進んたドル円は雇用統計の発表でNY時間はドル安円高に振れ、ドル円が112円台後半、ユーロ円が121円台半ば。大阪夜間取引終値は19090円。CME先物清算値は19055円だった。

 今週、日経平均の下値について言えることは「下げても18800円を防衛できるか」。3日の終値はそのラインから118円上にある。年が明けてからの日経平均は、ローソク足チャート上では「マド」を開けながらアップダウンをひたすら繰り返してきたが、12月SQ値の18867円のすぐ下にある18800円のラインをザラ場で割り込んだ日は1月18日と24日の2回しかない。前週、大きく下げた2日も3日もそれを割り込まなかった。ザラ場での18800円の下抜けは2回あるが、終値でも下回ったのは18783円で終わった1月24日の1回しかない。だから18800円をサポートライン(下値支持線)つまり「防衛線」とみなしても、差し支えないだろう。

 この防衛線を下に突破される時の前提としては、東京外為市場でドル円レートが昨年11月29日以来、一度も円高方向に割り込んでいない112円を突破されることだろう。「ドル円112円、日経平均18800円」の防衛線下抜けはトレンドが変化する「ボックス圏下抜け」に他ならないが、今週を予想するならそれはないとみる。

 その理由の一つ目はテクニカル指標。オシレーター系指標のほうは「売られすぎ」になった指標はわずか1個だけ(ストキャスティクス)だが、ボリンジャーバンドが「ニュートラル・ゾーン(-1σ~+1σ)」から下にはみ出すなど、トレンド系指標のほうはポジションがけっこう低めで下値の余地が少ない。3日終値が日足一目均衡表の「雲」の中に突っ込んでいるのも、動きを鈍くする。

 二つ目は下げ警戒のSQ週といえど、10日は「マイナーSQ」だということ。先物もオプションも全て清算する3、6、9、12月の「メジャーSQ」だとSQ週の火曜、水曜(最近では木曜も)の需給要因の下げが怖いが、マイナーSQは金額が大きい先物が外れる分、怖さが薄れる。3日終値も1月SQ値より264円低く、12月SQ値より51円高いだけなので、SQに備え高すぎる株価を引き下げる方向に是正される恐れは小さい。

 なお、前週2日は日銀のETF買いの条件を満たしながらパス(1回休み)されるという「裏切り」に見舞われて後場に大崩れしたが、日銀のETF買いもやはり今週の下支えになると信じたいところ。今までさんざんお世話になってきて、1回や2回、魔がさしただけで「裏切り者は許さない」と言い出す無情さは、ギャングだけで結構だ。

 一方、上値のほうは期待薄。SQ週、日米首脳会談待ちの様子見に加え、今たけなわの企業決算も「業績相場」を演出できるほど力強くはない。来期ではなく、3月末で締める今期の通期業績の上方修正でさえためらわせる理由は、言わずと知れた「ドナルド・トランプ」。良く言えば政策が不透明。悪く言えば何をするかわからない。前週は「80年代の日米貿易摩擦(ジャパン・バッシング)の亡霊」まで、その封印を解かれた。

 テクニカル指標を見ると上値追いができそうに見えるが、3日終値は値動きが鈍くなる日足一目均衡表の「雲」の中にある。今週は19100円を超える位置にあるレジスタンスラインの「雲の上限」を抜け、その上の「青空」に出られるとしても、3日現在19173円の25日移動平均線や、19182円の1月SQ値を100円ぐらい超えて19300円程度が関の山だろう。ドル円が112円台なら19000円を少し超えるぐらいにとどまる。終値ベースで19400円(=25日線+1σ)や19500円という水準は、10日の日米首脳会談が終わり、14日に「伏魔殿」東芝の決算も出て決算発表シーズンが終わった後の2月の後半まで、お預けになりそうだ。

 ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは18800~19300円とみる。

 3月期決算銘柄の4~12月期決算は第3四半期なので、通期業績がどう着地するかが投資家にとって最大の関心事。輸出企業、海外売上が大きい企業の決算は、為替レートの推移に大きく左右される。昨年4月以降を振り返れば、東京時間のドル円レートは111円台で始まり、6月前半まではどんなに円高でも105円を割り込むことはなかったが、夏場には100円の維持もおぼつかない水準になり、そのまま秋が深まっていった。それが大転換したのが日本時間で11月9日の「トランプ当選」で、同月17日には110円を突破。12月15日には118円台。その後は112円を一度も割ることなく現在に至っている。

 ざっくり言えば「上半期円高、下半期円安」だったが、夏場の100円そこそこの水準(東京時間の100円割れは5日間だけ)は相当なダメージだったようで、4~12月期決算の中身を見ると、この時に負った傷をその後の円安局面でも癒せていない企業が意外に多い。その意味ではドル円の昨年11月29日以来の「112円割れ」が起きると、それは病気が再発するようなもので、企業業績にとっては緊急事態と言える。もしドル円レートに「111」という数字が現れたら、「地獄の1丁目1番1号」と読んでも、いいだろう。(編集担当:寺尾淳)