不動産専門の情報サービス会社・株式会社東京カンテイの調査によると、2016年12月の小規模一戸建て住宅の価格は首都圏と近畿圏では下落傾向がみられるものの、大きな価格水準の変動はなく、概ね安定傾向を示している。好調なのは大阪府で、平均価格は前月比+2.2%の2983万円と4ヵ月ぶりに上昇。また愛知県も前月比+6.8%の3649万円と反転上昇。中部圏全体では+5.2%の3413万円と、中部圏は反転強含みとなっている。
景気の低迷や少子高齢化などの影響もあって、マイホームの購買需要が年々低下しているのは否めない。しかし、その一方で、やはり一戸建てに夢を持つ人も根強くいるのは事実だ。
住宅・不動産専門サイトを運営する株式会社オウチーノが20~69歳の男女、1113人を対象に実施した「住宅購入」に関するインターネット調査では、家を購入するとしたら中古ではなく新築がいいと答えた人が半数以上の52.8%にのぼった。また、そのうちの45.8%が「一戸建てにこだわる」と回答しており、「マンションにこだわる」が17.3%、「特にこだわりはない」が36.9%という結果になった。
では、新築一戸建てにこだわりを持つ人は、どのような点を重視して住宅を選んでいるのだろうか。同調査によると、戸建て購入者が最も重視しているのは「間取り」(34.1%)、次いで「日照、風通しの良さ」(32.3%)、「耐震性・構造」(28.2%)が、家選びの3大ポイントとなっている。興味深いのは、ここ数年、住宅メーカーが力を入れている省エネ性能や設備などは付加価値としては評価が高いものの、購入への決定力としては意外に乏しいようだ。
さらに、住宅メーカーのアキュラホームも大変興味深い調査結果を発表している。アキュラホーム住生活研究所が、同社が全国で手がけた住宅のうち100棟の住宅の間取りについて調査した「2017年住宅傾向調査」報告によると、玄関収納と和室について面白いニーズの変化がみられた。
同調査によると、2009年時点での設置率が35%だった玄関収納が、7年後の2016年はなんと2倍超の74%に増加していることがわかった。同社では、その背景には、家事の合理化、住まい手の暮らしの多様化、デザイン・防犯意識の向上などがあると推察している。
また、和室に関しては、マンションでは和室のある間取りが減少傾向であるのに対し、一戸建ての場合は増加傾向にあるという。ただし、これまでのような6畳以上の「部屋」ではなく、3~4畳程度の畳コーナーの需要が増えているそうだ。
「間取り」と一口にいっても、生活スタイルの変化とともに、求められているものは大きく変容していることがよくわかる。不景気だとか少子高齢化だとか、売れない理由を一生懸命に探すよりも、時代時代の顧客ニーズを敏感に汲み取って、それに対応することこそが必要なのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)