【今週の展望】雇用統計前のメジャーSQ週では期待できず

2017年03月05日 20:42

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アメリカ雇用統計の週といえば「様子見」。SQ週といえば火曜、水曜の「鬼門」警戒。ましてや3月は先物ありのメジャーSQ。両方ダブルでくる週に、期待はしづらい。

 前週5日間のカラ売り比率は、2月27日が41.0%、28日が37.3%、3月1日が36.7%、2日が35.7%、3日が39.1%。日経平均が「雲」の中に落ち、一時19000円も割り込んだ2月27日はさすがに40%を超えたが、翌日からはずっと40%を割り込んでいた。別名「恐怖指数」の日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)は、3月3日終値は17.62で2月24日終値の17.27から0.35ポイント上昇。前週2月27、28日は18を超えていたが、トランプ演説後の3月1~3日は18を割り込み恐怖指数は低下した。「あの大統領は何を言うかわからない」という恐怖が、イベントを通過して「あまり過激なことは言わなかったね」という安心感に変わった心理が、数字にあらわれていた。

 さて、3月3日のユーロ圏小売売上高は前月比-0.1%で、市場予測の+0.4%を裏切って3ヵ月連続のマイナス。12月の数値も下方修正された。ヨーロッパ市場は英独が下落、フランスが上昇。NYダウはマイナスの時間帯も長かったが終値は2.74ドルの小幅反発で、NASDAQもS&P500もプラスだった。最大の注目のFRB首脳の講演は、イエレン議長はシカゴで、「雇用指標とインフレが力強さを維持すれば3月の会合で利上げを決定する」と発言し、直後、為替のドル円は114円台後半まで円安進行。フィッシャー副議長もNYで、連銀総裁、FRB理事、議長の3月利上げに前向きな発言を「同僚の話すことは正しい」「強く支持する」とフォローした。4日からFOMCメンバーは口にチャックする「ブラックアウト(箝口令)」期間に入った。

 ISM非製造業景況感指数は57.6で1月から1.1ポイント上昇し2ヵ月ぶりのプラスで1年4ヵ月ぶりの高水準。原油先物価格は4日ぶりの反発。金先物価格は4日続落。アメリカの長期金利がイエレン発言で上昇した後に下落し、為替のドル円もNY時間に113円台まで円高に振れた後、114円近辺におさまる。ユーロ円は121円台前半。大阪夜間取引終値は19490円。CME先物清算値は19460円だった。

 いつもの月は、アメリカの雇用統計は第1金曜日、東京市場のSQは第2金曜日で重ならないが、3月は雇用統計が1週、後にずれるので同じ10日に重なる。2月は28日しかないので集計期間の都合。今週、その日米2つのイベントが重なって、アメリカ雇用統計週の「様子見」と、SQ週の火曜、水曜という「下げのアノマリー=鬼門」への警戒がダブルでやってくる。ましてや、3月のSQは3ヵ月ごとの先物も含めて全清算値を算出する「メジャーSQ」で、需給をめぐる駆け引きが派手になりやすい。下手に上値追いをしたらひっくり返されかねないので、市場参加者もより慎重になる。

 そんな環境では、たとえ好材料があっても素直に上昇しにくい。テクニカル指標も、トレンド系のボリンジャーバンドでは3日終値が25日線+1σを超えてニュートラルなポジションを上にはずれ、オシレーター系では1個、ストキャスティクスが「買われすぎ」のシグナルを発している。

 今年に入って、長く上値追いをはね返し続けてきた「壁」の19500円は3月2日の始値で一気に突破したが、その時に大きく開けたマドを3日後場に埋めにいって下落し、終値は19500円を割り込んだ。「壁」の抵抗のパワーはいまだ健在。今週はもし、為替のドル円レートが115円に接近するような円安のサポートを受けてこの壁を再び突破できたとしても、エネルギーが続かず、終値では前週2日の終値19564円あたりが限界とみる。

 19700円台、19800円台への上昇局面は、雇用統計もメジャーSQもすでに通過し、アメリカではトランプ大統領が予算教書を出し、FOMCでの利上げ実施の有無が判明し、オランダ総選挙の結果が出て、東京市場では3月期末の利益確定イベントが近づいて配当狙い、優待狙いの買いが入ってくる来週のお楽しみにとっておこう。あせることはない。

 そのように3月は株価に大きく影響するイベントが盛りだくさんで、今週の「イベント待ちの様子見」は10日の雇用統計だけにとどまらない。そのため商いはSQ日以外は売買高20億株割れの薄商いになると予想される。それにメジャーSQ週ならではの需給の波乱が加わると、ザラ場中に「為替の円高進行を伴う先物主導の仕掛け売り」という、いつも現れる魔物に突然、襲われかねない。

 それでも大幅に下落したら入ってくる押し目買いの勢力は健在で、日足一目均衡表の「雲」もクッションになり、大引けまでにけっこうリカバリーができると思われる。凡人のゴルフにたとえれば、ティーショットは林や池に放り込みOBになるほどひどくなく、ラフに入れてもすぐフェアウェイに戻して刻み、スコアは大崩れしない。今週の雲の上限は19133円で一定だが、それを終値ベースの下値のメドとみる。

 ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは、「雲」の上限と2日終値をそのまま当てはめて19133~19564円とみる。

 3月は、株価が上がる月。日経平均の過去のデータを見ると、2002年から2016年までの15年間の3月の月間騰落は9勝6敗の勝ち越しで、特にリーマンショック後の2009年以後の直近8年間は6勝2敗の好成績。黒星だった2011年3月は11日に東日本大震災が発生したから仕方がないところで、2014年3月はわずか27円安という惜敗だった。3月は配当取り、優待取りの権利確定イベントに加え例年、新規IPOがにぎわう月で、3月期末前には株式分割や自社株買い、増資や売出しもよく実施される。4月1日付の企業合併や経営統合も多い。通期業績見通しの上方修正の発表もある。そのように材料も話題も多くて株式市場が活気づくのも、毎年3月の株高を演出しているのだろう。(編集担当:寺尾淳)