2016年10月3日。パレスホテル東京で行われた「CEATEC JAPAN 2016」のオープニングレセプション会場は、一種異様なムードに包まれた。安倍晋三内閣総理大臣と世耕弘成経済産業大臣が現れ、登壇したからだ。このような業界イベントに総理大臣が訪れるのは異例中の異例。それだけでも大きな話題となったが、さらに注目を集めたのは、その来訪理由である。安倍総理の目的は、2017年3月にドイツ・ハノーバーで行われる世界最大級のBtoBソリューションの展示会「CeBIT 2017」への参加をエレクトロニクス業界の関係者に呼び掛けるためだった。それに先立つこと5月。日独首脳会談の際に、総理はドイツのメルケル首相から、日本が同展示会のメインの出展国となるカントリーパートナーになることを直々に要請されたのだ。総理が動いたことによって、これまで日本国内では知名度の低かった「CeBIT」がエレクトロ二クス業界を中心に大きな関心を集めることとなった。
そして2017年3月20日から25日までの6日間。いよいよ「CeBIT 2017」が開催され、日本貿易振興機構主催のジャパン・パビリオンでは、産官学から118社・団体が出展。中でも、トヨタ、日立、パナソニックやローム<6963>といった日本のトップメーカー各社はIoT関連を中心とした最先端技術を披露。カントリーパートナーである日本の会場は多いに盛り上がりを見せた。
また、安倍首相も現地を訪れ、メルケル首相と一緒にブース訪問を行った後、IoTを始めとする先端技術分野での日独間連携・協働の枠組みを定めた「ハノーバー宣言」を採択するなど、日本にとっては大変有意義な展示会となったようだ。
今年の「CeBIT 2017」は約22万名もの来場者で賑わったが、その内、出展者を含む約60%がドイツ国外から訪れている。そして今回、ジャパン・パビリオンをはじめ、一番の注目が集まったのは、やはりIoT関連の展示だったようだ。
日本企業では、ジャパン・パビリオンのElementゾーンに出展したロームが、IoT構築に不可欠なキーデバイスとなるセンサや無線通信技術のほか、業界をリードするSiCパワーデバイスなど、最先端の半導体ソリューションを紹介し、IoT社会の可能性を示した。
半導体専門商社PALTEKの100%連結子会社である株式会社エクスプローラも、同社が得意とする画像処理技術を活用したコーデック装置や映像機器開発プラットフォーム、センサデータ取得から可視化までの一連のIoTソリューションを展示するなど、日本勢の活躍が目立った。
また、Life/Office/Societyゾーンでは、日産自動車が、NASAがロボット監視に使用している自動運転技術VERVEを導入した「シームレス・オートノマス・モビリティ」と呼ばれるシステムを開発し、同社の人気車「リーフ」をベースにした自動運転のプロトタイプ車を展示。来るべき自動運転自動車の姿を映し出した。
今回の「CeBIT 2017」では、初めてのパートナーカントリーながら、日本は充分、その存在感と技術力を世界に示すことができたのではないだろうか。ドイツとのIoT協働強化が為されたことが、これからの日本の製造業にどのような影響をもたらすのか。日本の製造業が輝きを取り戻すきっかけになることを期待したい。(編集担当:藤原伊織)