NICTが世界最高出力の深紫外LEDを開発

2017年04月14日 07:08

 波長200~300nmで発光する深紫外LED(発光ダイオード)は、塩素などの有害な薬剤を用いない光のみによるウィルスの殺菌・無害化や水銀ランプの代替などが期待されている。水銀フリーかつ小型で手軽に機器に取り付けることができるため、医療から環境、ICT分野まで幅広い分野の産業、生活、社会インフラに対して画期的な技術革新をもたらす可能性がある。しかし、これまでは、本格的に普及させるにはその光出力が十分ではなかった。

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) 未来ICT研究所、深紫外光ICTデバイス先端開発センター 井上振一郎センター長らの研究グループは、光出力150mWを超える世界最高出力の深紫外LEDの開発に成功した。

 今回、新たに開発した窒化アルミニウム(AlN)基板上深紫外LEDに対するナノインプリント技術を用いて、LEDチップ全面に光取出し特性と放熱特性を同時に向上させる独自のナノ光・ナノフィン構造を形成することで、従来構造と比べ光出力を大幅に増大させることに成功した。これにより、シングルチップ(チップサイズ: 1mm2、電極メサ面積: 0.35mm2)の深紫外LED、殺菌作用の最も高い発光波長265nm、室温・連続駆動下において、深紫外波長帯 世界最高出力となる光出力150mW超を達成した。

 従来のフラットな素子構造では、注入電流が増加するとともに、外部量子効率と光出力が大きく低下する現象が見られたが、今回開発したナノ光・ナノフィン構造を形成した深紫外LEDでは、注入電流を増加(最大850mAまで)させても外部量子効率の低下は極めて少なく、光出力も増大を続けた。

 この結果、従来構造に対し、最大注入電流時において、約20倍という大幅な光出力の向上を達成しました。また、スペクトル解析の結果、高注入電流時でのLEDのジャンクション温度の上昇が従来構造に対し抑制されていることを明らかにした。

 この成果は、ナノ構造を駆使して光出力を大幅に向上させる技術でありながら、ナノインプリント技術を用いることで、従来の電子ビーム描画等の加工法を用いる場合と比較すると、圧倒的な製造時のコスト低減を可能にする手法だという。

 今回新たに開発した高スループット・低コストに作製可能、かつ小型・ポータブルで高出力な深紫外LEDは、水銀ランプなどの既存大型光源では難しかった様々な新しい組込み型アプリケーション実現の可能性を飛躍的に高めるものと期待されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)