ヘッドライトのハイビーム使用が義務づけられる。2014年、マツダが世界で初めて発売した「LEDアレイ方式グレアフリー(防眩)ハイビーム」。センシングカメラで対向車のヘッドランプや先行車のテールランプなどを検知してヘッドライトを調節する。
クルマを運転されるドライバーの皆さん、2017年3月12日の日曜日以降、夜の運転は気をつけた方がいいかも。クルマのヘッドライト、その使い方の法律が変わる。以下に警察庁ホームページの記載から変更点をそのまま記す。
■改正前(ヘッドライト使用について)
対向車と行き違うときは、前照灯を減光するか、下向きに切り替えなければなりません。ほかの車の直後を通行している場合も同じです。
交通量の多い市街地などでは、常に前照灯を下向きに切り替えて運転しましょう。また、対向車のライトがまぶしいときは、視点をやや左前方に移して、目がくらまないようにしましょう。
■改正後(ヘッドライト使用について)
前照灯は、交通量の多い市街地などを通行しているときを除き、上向きにして、歩行者などを少しでも早く発見するようにしましょう。ただし、対向車と行き違うときや、ほかの車の直後を通行しているときは、前照灯を減光するか、下向きに切り替えなければなりません。
交通量の多い市街地などでは、前照灯を下向きに切り替えて運転しましょう。また、対向車のライトがまぶしいときは、視点をやや左前方に移して、目がくらまないようにしましょう。
つまり、「夜間の通常走行時は“ハイビーム”で走れ」ということ。改正前の基本も、きちんと日本語を読めば、ハイビームが基本だったのだが、今回の改正で、明確に“ハイビーム”の使用を義務づけた。たしかに、道路運送車両法の保安基準においても、前照灯はハイビームが走行用前照灯で、ロービームがすれ違い用減光前照灯と区分されている。
警察庁のHPでは、「2015年(平成27年)中、夜間に発生した車両(原付以上)と横断中歩行者の交通死亡事故は625件で、そのほとんど(約96%)の車両は、前照灯が下向き(ロービーム)だった」として、「夜間、街灯が少ない暗い道などを走行する時は、前照灯を上向き(ハイビーム)にすることで歩行者などを遠くから発見することができ、早期の事故回避措置が可能となる」と結論づけている。
ただ、625件の人身死亡事故の内“ハイビーム”を点灯していたら防げた事故が何%だったのか、そうした分析はされていない。
しかし、この道路交通法改正はドライバーに対する安全運転義務の強化だ。もし、ロービームで走行して事故を起こした場合、ドライバーが「安全運転義務違反」に問われることはもちろん、事故責任割合にも大きく影響を与える可能性がある。また、噂の域をでないが、初期のシートベルト義務化の時のように、県警によっては「夜間の取り締まり」を実施するとも伝わってくる。
また、気になるのは“ハイビームが基本”という法律が、1960年(昭和35年)にできた法律だということ。その頃のクルマと交通事情を思い出すと良い。初代クラウンや初代セドリックが走っており、国民車と言われたスバル360がデビューしたばかり。トヨタの国民車パブリカは翌年のデビューまで待たなければいけない。カローラなど何処にも存在しないという時代だ。
日本初の自動車道に水銀灯照明が設置されるのは、1964年の第三京浜の開通まで待たねばならない。
当時は交通量も少ない、現在のようなLEDの明るいヘッドライトは無く、恐ろしく暗いシールドビームが当たり前だった。高速道路もなく、街灯は整備されていなかった。そんな頃の法律を後生大事に運用する警察庁のヘッドライトの暗さが、大いに気になる。
最近、「アダプティブ・ヘッドライト」システムという、自動切り替え型のヘッドライトが登場しているが、警察庁の要請でABSやESP(車両安定化装置)のように標準装備が義務づけられるかもしれない。(編集担当:吉田恒)