近年縮小を続ける日本のマリンレジャー市場。レジャー白書によると、その参加人口は平成6年に約160万人とピークを迎えて以降減少を続け、平成21年には約80万人と半減している。これと同調するようにプレジャーボートの国内出荷隻数も減少、保有隻数も平成12年度の約34万隻から平成21年には約23万隻にまで落ち込んでいる。さらに震災の余波もあり、マリンレジャー市場は非常に厳しい状況下にある。しかし、平成23年は5から10mサイズの中・小型のプレジャーボートの新規登録が14年ぶりに前年伸張し、一部で明るい兆しも見えてきているのも事実である。
そのような中、3月1日から4日にかけて「ジャパン インターナショナルボートショー2012」が横浜パシフィコ及び横浜ベイサイドマリーナで開催されている。今回で51回目を迎えるこのイベントは、大きな船から用品・アクセサリーなど海辺の遊び道具がぎっしりと展示されるほか、トークショーからPWC(水上オートバイ)のデモンストレーションなど、マリンレジャーに関することが全て詰まっているという。
このイベントの一角に、小学生によって描かれた絵が展示されている。「第23回全国児童水辺の風景画コンテスト」で入賞した作品だがこれは「子供たちが水辺に親しむ機会を創出したい」という願いからヤマハ発動機スポーツ振興財団が主催したコンテストだ。そこで今回、文部科学大臣賞を受賞した真謝紀香さんの描いた情景は、 マリンスポーツ市場の縮小を食い止めるヒントとなるかもしれない、と感じさせるものであった。それは彼女が通う沖縄・西表島の竹富町立上原小学校の恒例行事「魚巻き集会」。同校が総合的な校外体験学習として取り組む「海の達人」というプログラムの一環として、児童や父兄・地域住民などが地元漁師の指導を受けながら刺し網漁を体験するものである。さらにこのプログラムでは、地域の漁業従事者やダイバーといった方の協力の下、魚やサンゴ、また危険生物について生きた学習をはじめ、浜辺の清掃なども行っているという。
マリンレジャーの参加人口は減少と同時に高年齢化が進んでおり、(社)日本舟艇工業会が実施した「全国一斉マリンレジャーアンケート調査」では、その回答者の7割を30~50代が占め、10代と20代とは合せても1割程度となっている。市場縮小を食い止めるには、この1割程度の若年層を増やすことが不可欠ではないだろうか。「海や川は危険。だから子どもたちを水辺から遠ざけようという風潮がありますが、私たちはたくさんの経験の中から自然ならではの魅力や危険、またそうした危険を回避する知識や技術を身につけることが大切なのだと考えています。」とヤマハ発動機スポーツ振興財団のスタッフが語るように、危険だからといって遠ざけていては、必要な知識や経験を得る機会、更には魅力や楽しさといったものからも遠ざけることになる。日本の船外機メーカーは、世界シェアの約7割を占める。そんな世界的に高い評価を受ける製品が溢れる日本においてマリンレジャーを廃れさせない為には、上原小学校やヤマハ発動機スポーツ振興財団のような取り組みが必要不可欠なのではないだろうか。