宅配ボックスの需要が急激に伸びている。その背景には、インターネット通販による宅配サービスの増加と、大手宅配業者のヤマト運輸が2017年3月に運賃体系やサービスの内容について総合的な見直しを検討していると発表したことなどが挙げられる。また、再配達で生じるCO2削減などを理由に、政府が公共施設や駅などに設置する宅配ボックスに対して補助金を出すことを決めたのも、大きな後押しとなっているようだ。
公共の場への宅配ボックスの設置については、昨年、大きな動きがあった。
ヤマト運輸が2016年5月、フランスのネオポストシッピングと合弁会社を設立し、オープン型宅配ロッカー「PUDO(プドー)」の提供を開始することを発表したのだ。これまでにも他の様々な業者が公共の場に設置する宅配ロッカーを展開してきたものの、利用できる事業者が限られるため、爆発的な普及には至らなかった。「PUDO(プドー)」では、こういった既存の公共宅配ロッカーの問題点を改善し、他社の宅配事業者も利用できるオープン型にすることで商機を狙う。駅やバスターミナルなどを中心に設置台数を拡げていき、2022年度中に5000台と、ヤマトは強気の目標を掲げている。
しかし、それほどまでに宅配ボックスは必要なのだろうか。
国土交通省が2016年7月に公表した「宅配便等取扱個数の調査結果」をみてみると、2015年度の宅配便の取扱個数は約37億個。2010年度の31.9億個から約1.2倍も増加している。ところがその一方で、運輸業・郵送業の人手不足が深刻化している。消費者には便利な「再配達」や「時間指定」、「即日配送」などは、物流事業者側にとってみれば負担増加の材料でしかない。そこでヤマト運輸では近い将来、再配達については有料化することを検討し始めた。そこで、宅配ボックスに注目が集まっているというわけだ。
個人宅向けの宅配ボックスはこれまでマンション中心だったが、住宅業者などが戸建て向けの新しい商品を開発し、力を入れはじめたことも大きい。
例えば、パナソニック株式会社 エコソリューションズ社は、4月から販売を予定していた宅配ボックス「COMBO(コンボ)」シリーズの新製品を、既発売品の受注量が通常の5倍以上と想定外だったため、生産が追いつかず、受注を6月唐に延期すると発表している。同製品は、電気を使わずに施錠・押印が可能できることなどが特徴で、電気を使わないから電気代もかからないし、配線工事も不要になることなどが人気をよんでいる。また、木造住宅メーカーのアキュラホームも、すでに全国の展示場80ヶ所中27ヶ所のモデルハウスに宅配ボックスを搭載しているが、今後は顧客のニーズに応えるべく、さらに多くの拠点で導入する予定だという。
パナソニックが福井県あわら市と共同で実施した、宅配ボックスを活用した再配達削減の実証実験では、宅配ボックスの設置後、モニター世帯の再配達率が約49%から8%まで激減したという。宅配ボックスの普及によって、宅配事業者の負担軽減と環境保護の二つの社会問題が改善されることを願いたい。(編集担当:松田渡)