ECの市場規模は年々拡大しており、今後はスマートフォン経由による物販系がさらに増える見込み。ただし宅配業者の配達人員不足や宅配料の見直しといった問題があり、その影響でネット販売業者のサービス形態が変われば拡大スピードの鈍化も考えられる。
経済産業省は「平成28年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」を発表、インターネット通販市場(BtoC)とEC化率が2015年に比べてともに伸長していることが分かった。
16年のBtoC-ECの市場規模全体では15兆1,358億円で伸び率は9.9パーセント、このうち生活家電や化粧品、雑貨などの物販系分野は8兆43億円となり、10.6パーセントの伸び率となった。旅行や飲食などのサービス系分野も好調で5兆3,532億円、9.2パーセント伸長している。
10年のBtoC-ECの市場規模は7兆7,880億円、6年間で約2倍に拡大したことになる。
拡大した要因として上げられるのは市場参入した販売店の増加、物流事業者の宅配時間短縮化、SNSによる情報流通量の増大などに加え、スマートフォンの普及がある。
物販系分野のうち、スマートフォン経由の市場規模は2兆5,559億円となり、物販系分野の31.9パーセントを占める。15年は1兆9,862億円だったので、伸び率は28.7パーセントと高い。
物販系分野ではスマートフォンよりもPC経由の方が依然として市場規模は大きいが、これはPC経由が消費支出の大きい高齢者であるため。現在、高齢者もスマートフォン利用率も高まっていることから、スマートフォン経由によるBtoC-EC市場はさらに拡大すると予想されている。
中国やアメリカなどの越境EC、個人間取引のCtoC-ECなど市場規模には多分野における伸びしろが残されているが、EC市場拡大に影を落としているのが物流業者の宅配時間短縮化だ。
ヤマトホールディングス<9064>の中心的存在であるヤマト運輸は16年に1兆円超を売り上げたAmazonとの契約で当日配達からの撤退と宅配便の値上げを検討している。宅配業者では第2位のシェアを持つ佐川急便はすでに13年、Amazonとの取引から撤退した。
ヤマト運輸はEC市場拡大に比例して16年度の配達量が18億個超となり、過去最高を更新、配達人員の確保が追いつかないため負担が大きくなっている。当日配達の撤退や宅配便値上げの検討はこの状況を改善させることが目的だ。
宅配最大手のヤマト運輸が今後、どのような方針を打ち出すかによって他の宅配業者やネット通販業者もサービス内容の見直しを図る可能性がある。EC市場拡大における宅配業者の存在は大きい。(編集担当:久保田雄城)