総理の会見発言を「誰も信用しなくなる」危険

2017年06月24日 10:12

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これまでの文科省、官邸、内閣府の対応では文科省が客観的資料を提示し、説明しているのに、官邸、内閣府は内容を否定するものの、発言を裏づける資料がなく、信憑性に欠ける

 学校法人加計学園(岡山市)が経営する大学への獣医学部新設がトップダウン方式の国家戦略特区制度で悪用され「行政が歪められた」とする疑惑は全く払拭されていない。逆に文科省の資料からは文科省に圧力がかかった疑いが強まっている。

 『(平成28年)10/21 萩生田副長官ご発言概要』(資料)では「総理は『平成30年4月開学』とおしりを切っていた」「官邸は絶対やると言っている」などの記述があり、躊躇なく対応を急げとの内容が綴られている。

 文書は萩生田内閣官房副長官が昨年10月21日、文科省の常盤豊高等教育局長と面会した際のやり取りを専門教育課の課長補佐が記録したとされる文書。萩生田官房副長官は書かれている内容を否定しているが、専門教育課の共有フォルダーから見つかったものでもあることや、そもそも優秀な文科省職員がいいかげんなメモをとるはずがない。

 それでもメモ内容が事実と異なるというのであれば、萩生田副長官には、どこまでが事実なのか、ウソをつけば偽証罪に問われる「証人喚問」で疑念を払拭して頂くか、まったく利害関係のない公正・中立な『第3者機関』による関係省庁への再調査をして頂くほかに、国民が納得できる説明は導き出されそうにない。

 これまでの文科省、官邸、内閣府の対応では文科省が客観的資料を提示し、説明しているのに、官邸、内閣府は内容を否定するものの、発言を裏づける資料がなく、信憑性に欠ける。

 京都産業大学が特区制度から締め出されることになった「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り」とした条件には、内閣府のメールでは「指示は、藤原審議官曰く、官邸の萩生田副長官からあったようです」となっている。にもかかわらず、山本幸三地方創生担当大臣は「私が指示した」と主張する。指示したとする証拠資料を示すことができない。このような重要な指示を、まさか口頭のみで伝えるなどはあり得ない。だとすれば、国民はいずれを信用するだろう。

 言っていることが正しい、というのであれば、政府・与党は野党4党が憲法53条に基づき要求している「臨時国会」を早々に召集し、前川喜平・前文部科学事務次官や萩生田官房副長官ら関係者の「証人喚問」に応じることだ。

 また、メモに「総理は『平成30年4月開学』とおしりを切っていた」とする記述がある以上、「一切指示していない」と断言する総理自身が審議に応じるべき。憲法53条は衆参いずれかの総議員の4分の1以上の要求があれば内閣は国会を召集しなければならないことになっている。しかし、要求のあった日からいつまでに開かなければならないとの日数期限の明記が憲法にないことをいいことに、政府・与党は内閣改造後まで逃げるという見方がある。

 そのような卑怯な手法は取らず、堂々と議論し、疑惑払拭に真摯に努めるべきだ。このまま逃げ切る格好になれば、内閣改造で閣僚の顔ぶれを変えたとしても、記者会見で安倍総理が国民に呼びかける総理の会見発言を、誰も信用しなくなる。事態はより深刻になるだけだ。(編集担当:森高龍二)