沖縄県教職員組合那覇支部が那覇市など5市町村の教育委員会に対し、2018年度から使用する小学校道徳教育教科書に「教育出版」の教科書を使用しないよう20日までに要請した。
教育出版では国旗・国歌に対する礼儀作法まで記述するなど、強制が色濃く、戦前の修身に類似しているうえ、5年生教材には現役政治家の「安倍総理」の写真が文脈と関係なく使用されるなど、愛国心教育色や政治的中立に疑問を指摘する声もある。
教育出版の教科書については教科書問題に取り組んでいる「子どもと教科書全国ネット21事務局長の俵義文氏もHPで、問題点を指摘。「検定合格した8社66点の教科書を調査・分析・検討した結果、教育出版の教科書について、このまま採択され、子どもの手に渡ることに強い疑念を持つに至った」と特に問題となる点を挙げている。
「他社と異なる異様な内容が含まれていると考えざるをえない」とする点として(1)2年生で扱っている「国旗・国歌」が他社と比べ異常に大きく偏った取り上げ方をしている。「君が代」の歌詞説明が「日本の平和が長く続くようにとの願いだ」と虚偽の説明(2)君が代斉唱時の起立・礼の行動まで写真入りで指示している(3)オリンピック・パラリンピックで使われる旗や歌は選手団の旗や歌(オリンピック憲章)であるのに、意図的に混同して「国旗・国歌」と記述している、と指摘。
また5年生教科書では「下町ボブスレー」で安倍首相の写真をあえて載せている。「現役政治家の教科書掲載は『義務教育諸学校教科用図書検定基準』の第2章・教科共通の条件の2の(8)特定の個人、団体などについて、その活動に対する政治的又は宗教的な援助や助長となるおそれのあるところはなく、また、その権利や利益を侵害するおそれのあるところはないこととの規定に明白に違反し、教育の政治的中立を侵す重大な問題」と提起した。
あわせて「正しいあいさつのしかたを小学校1年、2年と続けて指示している。子どもたちの行為、行動を型にはめる規制・強制が至る所に強く出ている。『どれが正しいおじぎのしかたか』など、戦前の修身と同じようなおじぎをさせる『しつけ』・『礼儀』の教材が多く取り入れられている」と問題点をあげている。
俵氏は、この教科書の編著者についても「育鵬社の中学校社会科教科書をつくり採択活動を行ってきた日本教育再生機構(「再生機構」、八木秀次理事長)の道徳教育の中心メンバーが教育出版の監修・編集執筆者に名を連ねている」と名前をあげ指摘している。道徳教育を巡っては、今後も、国会等で議論する必要がでている。(編集担当:森高龍二)