廣済堂<7868>は2月10日に平成24年度3月期第3四半期決算(連結)を発表、売上高は285億8100万円と前年同期に比べ2.7%増加した。また、営業利益は前年同期比から大きく101%増となる32億5400万円、経常利益は同138.3%増の31億2300万円、純利益も同じく大きく伸長し14億7800万円で、前年同期と比べて増収・増益となり、全般的に好調を維持する形となった。
要因としては、復調傾向にあった人材事業の求人広告が震災復興特需を受けて増加したこと、さらに、出版事業でのベストセラーによる大幅な伸長に加え、葬祭関連事業も堅調さを維持したことにより、印刷関連事業の落ち込みをカバーしたからとしている。
一方、営業利益は売上高同様、収益率の高い部門の増収に加え、印刷・出版関連事業の継続的な固定費削減の実施と、償却方法変更に伴う減価償却費減少により、売上高の伸張率を大きく上回り、大幅な増益となった。
セグメント別で注目されるのは印刷部門。深刻な状態が続く業界全体を同社でも反映した形となっている。大手の決算状況(連結)においては大日本印刷<7912>の売上高が1兆1359億円で前年同期比5.4%減、凸版印刷<7911>は情報・ネットワーク系事業で、証券・カード関連が好調だったことにより、4.5%増の1兆1583億円と発表されたが、商業印刷や出版印刷は前年を下回っている。同じく共同印刷<7914>も売上高を前年同期比1.4%減の726億5300万円としており、大手といえど厳しい状況だ。
凸版印刷のように、印刷部門での別事業の好調さや、パッケージ関連・IT事業の堅調さで十分カバーできれば増収・増益が可能であろう。しかし、大半の印刷系企業においては商業・出版印刷の需要の減少傾向は止まらず、止む無くコストセーブを行うしかなく、長期的に明るい材料は見つけにくい。そんな中、ローコスト印刷で業績を上げてきた「印刷通販」市場に、昨年、大手の大日本印刷がアスクル<2678>との業務提携により参入したことは業界に大きな衝撃を与えた。
しかしながら、もはや、「印刷通販」ですら淘汰されようとしている時代。印刷事業だけではなく、多角的に安定した部門も併せ持つ廣済堂の印刷部門における経営計画は注目を集める。その中期経営計画として同社は受託型の製造業から、印刷・IT・映像などのメディアリソースをワンストップで提供するだけでなく、情報加工の上流工程である企画・マーケティングを強化し、事業領域を拡大する”川上型ビジネス”への転換をパラダイムシフトとして掲げている。これにより、収益構造の転換を図るとともに、マーケットそのものを広げていくという考えだ。現在、同社が主催者として名を連ねる「フェルメール 光の王国展」はその具体的成果の表れだ。