安倍政権5年間の裁定は、小池百合子都知事率いる「希望の党」誕生と「国民生活を脅かし、憲法を軽視し、民主主義を否定する安倍政権を一刻も早く終わらせることが、わが国政治の最大の課題」とする民進党の前原誠司代表の「奇策」で大きく様相を変えた
10月10日公示、22日投開票で実施される衆議院選挙(総選挙)が「政権選択選挙」に現実味を帯びてきた。
安倍政権5年間の裁定は、小池百合子都知事率いる「希望の党」誕生と「国民生活を脅かし、憲法を軽視し、民主主義を否定する安倍政権を一刻も早く終わらせることが、わが国政治の最大の課題」とする民進党の前原誠司代表の「奇策」で大きく様相を変えた。
首都・東京の都議会議員選挙の勢いそのままに、小池都知事率いる「希望の党」が急成長をみせている。小選挙区、比例代表でどこまで候補を擁立できるか、10月6日まで様子を見る必要があるものの、前原代表が党からは候補を擁立せず、希望の党に公認申請し選挙に挑むよう、究極の策をとったことが最大の要因だ。また小池代表と前原代表は29日の会談で政権交代を目指す方針を確認した。
今回の衆院選挙は一票の格差是正を図るため小選挙区で6議席減らし289議席、比例代表で4議席減らし176議席が定数になっている。過半数は233議席。安倍晋三総理は今回選挙の勝敗ラインは「与党で過半数」としている。
改選前の与党は320議席。与党議席を87議席減らしても選挙に勝ったと言える状況を自ら作っているのだが、50議席も減らせば惨敗、限りなく233に近づけば大惨敗、過半数を割れば政権交代責任をとらなければならないはず。
希望の党は100人を超える候補擁立準備をしている、民進党も200人あまりの候補を準備してきた、今回の奇策はオリーブの木を提唱してきた自由党の小沢一郎代表が授けたのではとの見方もあるが、自由党も9人の候補を予定している模様で、自由党も加わり「安倍政権打倒」をこの選挙で実現するとするなら、300人近い候補を擁立する可能性が考えられる。
民進党の何人が希望の党に合流するのかが大きい。また、その顔ぶれにも注目したい。菅直人元総理や野田佳彦前総理も希望の党から出るのか。希望の党が政権を獲得した場合、過去の失敗事例も踏まえた助言役として貴重な人材になるはずだ。
細野豪志元環境大臣は党イメージを気にしてか、両氏に合流辞退を促したそうだが、小池代表は「総合的に考えたい」と大所高所で判断する考えを示した、という。認めることが党公約「原発ゼロ」への真剣度を示すことにもなるだろう。
今回、政権選択選挙に押し上げる要因となったひとつに、民進党の大胆な決断以外に、小池代表が日本維新の会の松井一郎代表(府知事)と総選挙で連携する方向で動いていることもある。
「安倍一強」といわれる下で、行き過ぎた部分をどう修正できるのか。希望の党の目指す社会像やそのための諸々の政策を、今は、1日も早く、国民に示すことが、自公政権に代わる政党であるのかどうか、最も重要な仕事となる。
希望の党がどのような党であるのか、党の政策が示されて初めて、自公政権との対比が可能になる。ムードや風任せでなく、現実的な路線、政策を示してほしい。
自公政権対民進・共産・自由・社民の選挙協力による小選挙区1対1の構図が国民には最も分かりやすいものになっていたと思うのだが、そうならなかった。民進党に枝野幸男代表が誕生しなかった結果だろう。今、希望の党と自公政権の違いを分かりやすくしているのは「原発政策のみ」。希望の党は原発ゼロを公約にかかげている。
今回の流れに、日本共産党、社会民主党はカヤの外に置かれた格好だ。しかし、原発ゼロを目指すことでは一致している。協力できるところは協力し、実現への道を早めてほしい。希望の党が政権をとれば、少なくとも、政府のエネルギー基本計画(原発を重要なベースロード電源とし、2030年時点での原発比率を20~22%とするとの方針)は、現行の審議とは別の方向を目指す内容に変わるはず。
安全保障や社会保障政策、経済政策、エネルギー政策、少子高齢化社会に対応する政策の諸々を、一刻も早く提示いただくことを求めたい。絵に描いた餅でなく、実現できる現実的な公約を期待する。公約が発表されれば、次回は、自民党、希望の党、日本共産党など各党の公約比較ができればと考えている。(編集担当:森高龍二)