10月4日、恒例の「グッドデザイン賞2017」の発表が行われ、約4000件に及ぶ募集の中から約1200件が選ばれ、受賞した。毎年のことながら、グッドデザインに選出された1200点はいずれも個性豊かなものばかりで、中には「こんなものまで?」と思うようなものもある。
日本人の多くは「デザイン」と聞くと、色や形ばかりを想像してしまうが、それはデザインの側面でしかない。本物の「良いデザイン」とは、それを使う人や状況、さらには環境面など社会的な背景への配慮なども含めて考えて作られた作品であり、生活を豊かにするもの、またはその可能性を秘めているものをさす。それを念頭に置いて受賞作品をみてみると、確かに当てはまるものばかりだ。
例えば、受賞作の中には今年、大きな話題を呼んだ、株式会社文響社の「うんこドリル」などがある。同商品は小学校の授業で習う1006の漢字を「うんこ」という言葉を使って覚えるなど、今までにない発想の学習参考書。非常に面倒くさい漢字の学習も、これなら子どもたちも笑いながら勉強できるだろう。子どもの心理を上手く考えた、ユーモア溢れる優れたデザインだ。
一方、證大寺の永代供養墓 「&(安堵)」も面白い。「&(安堵)」は、「お墓は戸籍を同じくする一族で守る」という従来の有り方を刷新した、ふたりで入る専用のお墓だ。墓石は爽やかなイメージの白い大理石だが、変わっているのは色だけではない。形も、一見しただけではとてもお墓には見えないシンプルな円柱形で、前衛的な芸術作品のようにも見える。しかも敷地のかたちや墓地の区画にかかわらず、様々なレイアウトが可能で、維持管理の心配も不要だという。少子化が進むこれからの社会に合ったお墓といえるかもしれない。
また、6年連続の受賞を果たした、木造注文住宅のアキュラホームの受賞作品「在来木造建築業界の未来を変える建築体制イノベーション」も興味深い。同作は住宅商品そのものではなく、木造住宅における「大工」「大工サポートチーム」と、昨年グッドデザイン賞を受賞した同社の「ジャストイン配送システム」が相互に支援し合う、新たな建築体制のビジネスモデルだ。
大工サポートチームによる作業の効率化を図ることで、親方大工の1棟当たりの作業量が44%も削減され、年間請負棟数が増加、収入も7%アップするという。さらにサポートチーム研修体制確立による人材育成によって、懸念されている人材不足にも対応していく。これまでの建築体制を徹底的に見直して改善、効率化することで、住宅商品のクオリティを下げることなくコストダウンを実現し、顧客にもスタッフにも利益を還元する。当然、企業側のメリットも大きいし、社会にも貢献する。近江商人のいうところの「三方良し」を体現した、まさに未来を見据えたデザインといえるだろう。
これらのデザインに共通するところは、常に「ヒト」が中心にあるというところだろう。アイデアや見た目の奇抜さなどだけでなく、常に「誰にとって何が必要で、何が求められているか」が芯にある。インターネットが普及し、多くのものがオートメーション化されていく時代だが、たとえこの先、どれだけ文明が発展を遂げたとしても、血の通ったデザインは、機械には真似ができるものではないだろう。(編集担当:藤原伊織)