グッドデザイン賞は、1957年に通商産業省(現:経済産業省)が創設した「グッドデザイン商品選定制度」を基盤として、現在公益財団法人日本デザイン振興会が主催するデザイン推奨制度だ。一般に形のある商品、つまり家電製品や自動車、建築などに与えられるアワードだと思われているが、実は形として実態が見えないサービスや取り組み、団体組織などにも与えられる。
グッドデザイン賞審査委員長の永井一史氏は、「日本の社会、産業や暮らしのあり方が変化するなか、デザインは次の時代を切り拓くための推進力だ。“デザインが将来の社会にどのように働きかけるのか”に重点をおいて2015年度のグッドデザイン賞を審査した」と語った。まさに、ここにグッドデザイン賞の意味が内包されている。
つまり、最新のデザインの結果に対するアワード授与だけではなく、これから将来のあるべき姿が展望できるデザインにも与えられるものなのだ。今回、審査委員会に選ばれたベスト100に選定されたすべての製品・サービスなどは、未来を展望する素晴らしいデザインだということなのだ。
なお、グッドデザイン賞は、毎年約3500件のなかから、年度の「グッドデザイン・ベスト100」を選定、そのなかから特別賞を選ぶ。特別賞には「未来づくりデザイン賞」「ものづくりデザイン賞」など5項目に分かれる。
さらに、審査委員長、審査副委員長、審査ユニットリーダー、フォーカス・イシュー・ディレクター、「グッドデザインエキシビション2015(G展)」一般入場者の投票で決定する「グッドデザイン大賞」は、時代性、提案性、審美性、象徴性といった観点から評価が行なわれ、毎年1点が選出されている。
2015年度は、まず大賞候補8点が委員会で選定された。その8件の大賞候補は、昨年末に発売された世界初の燃料電池車(FCV)「トヨタ・ミライ」、シャープ株式会社の液晶ディスプレイ「フリーフォームディスプレイ」のように社会的に良く知られた製品から、exiii株式会社の電動義手「HACKberry」、WHILL株式会社のパーソナルモビリティ「WHILL Model」、一般社団法人周南ツーリズム協議会の道の駅「ソレーネ周南」、一級建築士事務所スターパイロッツ+長野県木島平村の「道の駅FARMUS木島平」、合同会社五穀豊穣の和食給食推進事業「和食給食応援団」、株式会社タクラム・デザイン・エンジニアリングのビッグデータビジュアライザー「地域経済ビッグデータビジュアライゼーションのプロトタイピングシステム」などなかなか一般的に知られていない製品を含む8点だった。
10月31日から3日間にわたって東京・六本木のミッドタウンで一般投票が実施され、最多得票数を獲得した1点が大賞に選ばれた。結果、ベンチャー企業のWHILLが開発したパーソナルモビリティ「WHILL Model A」(グッドデザイン・未来づくりデザイン賞カテゴリー)が選出、受賞となった。大賞を受賞した「WHILL Model A」は、新しいカテゴリーの「パーソナルモビリティ」として開発された電動車椅子。その開発は、「100m先のコンビニに行くのをあきらめる」という車椅子ユーザーの言葉から始まったという。 車椅子ユーザーだけではなく、まったく新しいカテゴリーの 「パーソナルモビリティ」として評価された。
また、同じ「グッドデザイン・未来づくりデザイン賞」カテゴリーでは、形のない組織・団体・サービスなどに授与される、グッドデザイン・ベスト100から選出した特別賞を住宅メーカーが主宰するアキュラホーム、ならびに同社社長の宮沢俊哉氏が主宰する全国工務店ネットワーク「JAHBnet(ジャーブネット)」が受賞した。
「JAHBnet」が獲得したグッドデザイン特別賞は、「ビジネスモデルの戦略的なデザイン」に対して表彰したもので、選考委員から、「通常、住宅建設業界に限らず、自分たちの企業がノウハウを持ったら、一般的に自分がトップに立つピラミッド型のフランチャイズネットワークを作る。が、フラットなランドテーブル型の組織をつくったところが素晴しい。この仕組みは、参加する企業が非常にフラットで相互に協力しながら新しいものを作っていく、という組織作りに成功した、まさに企業が共存共栄して成長するビジネスモデルとして評価した。今後の飛躍にも期待できる」との高い評価のコメントを得た。(編集担当:吉田恒)