公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「2015年度 グッドデザイン賞」の受賞結果が、去る9月29日に発表された。今年度は、ここ10年来で最多となる3658件のデザインが応募され、その中から、昨年を上回る1337件がグッドデザイン賞を受賞した。
グッドデザイン賞は、その名の通り、世の中に展開されている様々な商品やサービスなどから「よいデザイン」を選び、顕彰する、総合的なデザインの推奨制度だ。11月には、受賞作品の中でも最も優れた作品が今年度の「グッドデザイン大賞」として発表される。
それは確かに、出展企業や団体にとっては大変名誉なことであるのは間違いないが、それ以上に大切なことは、グッドデザイン賞受賞後のプロモーションだ。
グッドデザインを受賞すると、商品のプロモーションに「Gマーク」を使用することが認められる。この「Gマーク」は創設以来半世紀以上にわたり、「よいデザイン」の指標として使われてきたもので、これまでの受賞作品約42000件で活用されていることもあり、マークも広く認知されている。つまり「Gマーク」が付いていることで「よいデザイン」であることのアピールと、信頼を得ることができるのだ。
では、「よいデザイン」とは、どのようなものを指すのだろうか。グッドデザイン賞が、他のデザイン・アワードと一線を画すのは、すべて実用品に対して贈られる賞だという点だ。つまり、見た目の姿形や斬新さ、スタイリッシュさだけでなく、ユーザー目線にたった実用的なデザインであるかどうかが求められるのだ。
ユーザー目線と一口に言っても様々だが、近年のグッドデザイン賞で際立つのが「女性目線」の商品ではないだろうか。例えば、2014年度に受賞したコールマン ジャパン株式会社のアウトドア用クーラー「レトロスチールクーラー/28QT(イエロー)」は、女性のアウトドアレジャーへの参加が増えていることに着目し、色を明るいイエローにしたり、女性でも持ちやすいサイズにするなどの工夫が凝らされている。
住宅の分野では、パナホーム株式会社<1924>の賃貸住宅向けオリジナル洗面化粧台「スマート・ウィズ洗面ユニット」などが挙がる。同社では、女性の視点や感性に応える賃貸住宅コンセプト『Lacine(ラシーネ)』を全国展開するとともに、女性の価値観やライフスタイル、ニーズなどを研究する社内組織として「ラシーネ研究所」を展開しているが、同商品の開発にあたっては、「ラシーネ研究所」とアイカ工業株式会社<4206>の女性目線商品開発プロジェクトメンバーと共同で、朝の洗面所における「困りごと」を研究した。その結果、女性の洗面における行動調査などから、忙しい朝は夫婦や家族で洗面を譲り合う、化粧道具やアクセサリーを置く場所がない等、女性の「立ち化粧」における「困りごと」が浮き彫りになったという。そこで、夫婦や家族2人同時に使う際のポジショニングにこだわり、お互いが快適かつ効率よく使えるスマートで機能的な洗面化粧台「スマート・ウィズ洗面ユニット」を開発、今年6月から『Lacine(ラシーネ)』で採用している。
このほか、パナホーム株式会社では、街づくり事業においても、同社が街づくり・住まいづくりを手掛ける先進のスマートタウン『Fujisawaサスティナブル・スマートタウン』(神奈川県藤沢市)と、奈良の歴史的街並みを継承するデザインのスマートマンション『パークナードならまち東城戸』(奈良市東城戸町)が、ダブル受賞している。
世の中を見渡してみると、Gマークの付いている商品やサービスが数多く存在していることに気付く。58年もの歴史があると当然といえば当然だが、Gマークの歴史は日本人の工夫とものづくりの歴史ともいえるのではないだろうか。使う人の視点に立った「よいデザイン」があふれる社会。Gマークは、日本の豊かさと平和、おもてなし精神の象徴なのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)