安心・安全・便利な食材宅配、市場拡大と共に激化する生き残り争い

2012年11月30日 11:00

 昨年、帝国データバンクが発表した「食材宅配企業の経営実態調査」によると、食材宅配企業2058社の売上高合計は2008年~2010年で5.0%増と、宅配非対応の食材小売企業6999社の1.6%増を3.4ポイント上回るなど、業績を伸ばしている食材宅配企業。近年の共働き世帯の増加や高齢化の進行によりこの傾向は強まっており、セブン&アイHD が参入するなど、この市場は本格的な拡大を見せている。

 こうした中、千趣会が運営するベルメゾン生活スタイル研究所が、20代から50代の女性に対し行った「ふだんの食材」についての調査結果を発表した。この調査結果によると、食材の安全性を気にすると回答した人は76.8%に上り、約半数の人間が一年前よりも気にするようになったという。また、全体の62.9%が有機野菜に興味を持っており、全体の90.1%に購入経験があると回答。そのうち46.8%が定期的に購入おり、17.6%が1年前と比べて購入頻度が増えている。さらには、「生産地が明確」や「無添加食材や有機野菜が手に入る」などといった理由で、有機野菜を食材宅配で購入する傾向が高まっており、その利用経験者は約4割にという結果となった。

 買い物をする時間を選ばず、時間を節約でき、さらには重い荷物を自ら運ばなくてもよいなどのメリットを持つ食材宅配。これらのメリットは、高齢者から若い世代にまで広く共通するメリットであることから、市場の拡大を見込んで今後も参入する企業は少なくないであろう。一方で、食材を宅配するというサービスでは他社との差別化を図りにくく、どういった付加価値をつけるか、という競争が激化することが予想される。現在は中小企業であっても、市場の拡大を追い風に有機野菜への特化や小回りの良さで一定の売り上げを確保してきたが、資金力のある大手企業の参入により、今後も堅調に推移するとは言えない状況にある。生き残りをかけた戦いの中で、どういった新しいサービスが提供されるのか、期待が高まるところであろう。