富士通が、タイのマプタプット工業団地における環境問題に対し、ICTを活用した解決支援を実施すると発表した。石油化学、鉄鋼、精油コンビナートを有する同工業団地において、揮発性有機化合物(VOC)や臭気、オゾンといった環境汚染物質に関するデータ収集や監視、分析を行う環境モニタリングシステムを構築する。
同社は、日本の環境ソリューションで培った環境技術・ノウハウを活かした環境モニタリングシステムの構築だけでなく、このシステムにより得られた測定データを活用してタイ国立チュラロンコン大学が推進するVOC拡散予測モデルに関する研究を、日本環境衛生センター・アジア大気汚染研究センター(ACAP)とともに支援する。さらには、環境技術のタイ国内への移転を図るとともに、タイにおける環境技術者の育成を支援するという。
今回の事業は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究協力事業「環境技術等総合研究協力(助成事業)」として2011年12月に採択され、タイ政府からの要望にもとづき今年度から2012年度にかけて取り組むもの。先日も、サウジアラビアにおいて、工業団地におけるスマートコミュニティ事業の着手について基本合意及び、最先端のICTと環境・省エネ技術を駆使した事業展開の予定を発表している。平成24年3月期第3四半期決算での売上高は、国内では増収となったものの、前年同期比で1.5%の減収となっている。途上国や新興国へのインフラやシステム、技術などの積極的な輸出は、自然災害や慢性化しつつある円高の中で、業績を回復させる一手となるか。諸刃の剣ともなり得る富士通の事業展開は、今後も注目に値するであろう。