富士通が、サウジアラビア工業用地公団(以下、MODON)と、サウジアラビアの工業団地におけるスマートコミュニティ事業の着手について基本合意したと発表した。現地法人である富士通アラビアを拠点に、富士電機およびメタウォーターと共同で最先端のICTと環境・省エネ技術を駆使し、今年度および2012年度にかけての事業化可能性調査後、本格的な事業展開を行う予定とのことである。
MODONとは、民間部門との協業を通じ、工業団地および技術地区を計画、建設および運営、維持管理する責務を委任されているサウジアラビアの独立政府機関。サウジアラビアは工業化を強力に推進している一方で、急速な工業化に伴い、大気や水などの環境問題への対処が喫緊の課題となっていた。
そこで富士通は、2010年から工業団地のエコ化に関する議論をMODONと開始し、2011年3月には1回目の現地視察を実施。2011年9月には、エコインダストリアルシティ分野における協力について、MODON総裁と基本合意を締結していた。さらに今回の事業化可能性調査が、経済産業省の平成23年度「インフラ・システム輸出促進調査等委託事業(グローバル市場におけるスマートコミュニティ等の事業可能性調査)」として2011年10月に採択されたことを受け、次のステップに向けた追加の基本合意「環境マネジメントシステムおよびスマートコミュニティ関連の協力に関する覚書」をMODONと締結するに至ったという。
社会インフラを巡る世界市場は急激に変化を遂げており、途上国や新興国のみならず、先進国においても需要が急拡大、成長分野として注目されている。その為政府は、設計・建設から維持・管理までを含めてインフラやシステムを統合的に受注する「インフラ・システム輸出」を、新成長戦略において重要施策として位置づけている。経済産業省の「インフラ・システム輸出促進調査等委託事業(グローバル市場におけるスマートコミュニティ等の事業可能性調査)」はその急先鋒。平成23年度は富士通のみならず、日本総合研究所、日立製作所、三菱重工業も3社共同で中国・シンガポール天津エコシティにおいて本調査を受託、平成22年度は明電舎、シャープ、日本電気が委託先として採択され、島嶼国を対象とした小規模発電システムによるマイクログリッドの国際展開事業可能性調査を行っている。
日本をけん引した製造業が軒並みシェア・業績を急落させている。もはや輸出業において、個々の機器、設備を納入していればよいという時代は終わったのかもしれない。インフラ・システムの輸出は、すでに欧米諸国をはじめ、中国や韓国等も官民一体となって積極的に参入している。今回の事業で問われるのは、海外インフラ輸出のモデルケースとなれるか否かだけでない。日本の復興・復権のために、ここでイニシアティブを握れるか、それが試されているのではないだろうか。