クルマの「xEVトレンド」に欠かせないデバイス、「SiC」採用本格化、ローム

2018年01月28日 14:42

インバータ

京都・ローム製のトランジスタとダイオードを同梱した「フルSiCパワーモジュール」の採用で、43%の小型化、6kgの軽量化を達成した「ヴェンチュリー・フォーミュラEチーム」マシンのインバータ

 自動車のパワーユニットが世界的にHEV(ハイブリッド)、PHEV(プラグインハイブリッド)、そしてEV(ピュア電動車)などの電動化「xEVトレンド」が急速に進むなか、1月17日から東京ビッグサイトで「オートモーティブ・ワールド2018/国際カーエレクトロニクス技術展」が開催された。

 このイベントで注目されたのは、モビリティの近未来に向けた「B2B(Business to Business)」の最新技術だ。なかでも冒頭で述べた「クルマの電動化」を牽引する技術群に熱い視線が注がれた。

 日本を代表する電子部品メーカーのひとつであるローム(京都)のブースでは、Si半導体の限界を大きく超えるSiC半導体への期待の高まりと、その近未来を感じさせる展示がなされた。

 SiC半導体の優位性は、Si半導体に比べて10倍ともいわれる高い絶縁破壊強度があり、大幅にオン抵抗値とスイッチング損失を低減できることだ。また、Siに比べて約3倍のワイドバンドギャップ電圧であるため、200℃以上の高温環境でも駆動できる。

 このSiC半導体はいま、電動車のパワーコントロールユニット(PCU)の中核をなす「インバータ」を改良する重要な選択肢として業界から注目が集まっている。

 つまり、オン抵抗が低く放熱性の良いSiCパワーモジュールを使うことで、Siパワーモジュールを使用したこれまでのインバータで必須とされた水冷式の冷却装置を空冷に変更可能になるなど、システム全体の小型化・省エネ化が容易なのだ。

 ロームは2010年に世界で初めてSiC-MOSFETを量産化し、2012年にはフルSiCモジュールを、2015年にはSiCトレンチMOSFETを世界で初めて量産した。

 ロームグループの一貫した垂直統合型の半導体生産体制下におけるフルSiCモジュールの信頼性は高く、同時に自動車メーカーなどの厳しい要求にフレキシブルに対応できるという。

 現在、ロームのSiC半導体は、車載用オンボード急速充電に対応するSiCショットキーバリアダイオード(SiC-SBD)が、充電時間の高速化・時間短縮に繋がることが評価され、日本だけでなくグローバルな採用が進み、世界シェア・トップの実績を持つ。

 ロームは、電動車レースの世界最高峰「Formula E」に参戦する「ヴェンチュリー(Venturi)フォーミュラEチーム」とシーズン3(2016-2017年)からオフィシャル・テクノロジー・パートナーシップ契約を締結している。

 同チームのマシン駆動の中核を担うインバータに世界最先端のパワー半導体であるSiCパワーデバイスを提供し、小型・軽量化、高効率化をサポートしているのだ。

 シーズン3で、ロームが提供したパワーデバイスは、ダイオード(SiC-SBD)だけだったが、シーズン4よりトランジスタとダイオードを同梱したフルSiCパワーモジュールを提供している。これによって、SiCを搭載する以前、つまりシーズン2のインバータと比較して、43%小型化、6kgの軽量化を実現した。

 同時に、燃費(電費?)も大幅に改善しているようで、シーズン4のヴェンチュリーマシンの電池残量は他のチームを大幅に凌いでいたという。これは、量産型EVにとって “ピュアEVの最大の弱点”とされる「短い航続距離」の克服をもたらす可能性を秘めている。

 このふたつの事実だけをみても、電動車のPCUにSiCパワー半導体は今後、欠くことのできないデバイスとなることは間違いない。クルマの「xEV トレンド」から目が離せない。(編集担当:吉田恒)