東京証券取引所に上場する企業1005社の決算によると、2018年3月期の純利益が2年連続で過去最高になる見通しとなった。景気拡大で売上が好調な企業が多く、その分予算についても上方修正するといったケースが増えている。過去最高の利益を更新するということは企業にとっても新たな経営戦略を立案するうえで重要な材料となり、上場した企業はさらに業績拡大を目指すとともに経済面への影響も期待されている。
上場している企業の中でも特に好調な産業は自動車や電機、化学といった分野の業界だ。自動車については日本国内では無資格者検査など様々な問題があったものの、海外での業績が好調であることが関係している。最近ではEVや電気自動車などを開発し、日本車以外のメーカーも台頭しているものの、日本車に対する信頼性は高いということが伺える。この点は電機製品についても同様であり、日本の技術力の高さは世界の認めるところであり、その点が日本製品の信頼性につながり業績という結果となっている。化学という分野についてはスマートフォンなどに用いられる高機能品やヘルスケア向けの材料などで好調な状態が続いている。これらの分野での業績が好調な背景にあるのは、世界的に経済が堅調な成長を続けているという点が大きいといえるだろう。
上場企業が軒並み最高益を更新しているとはいえ、このままの状態が今後も続くかどうかについてはまだ不透明な部分も少なくない。加工貿易を得意とする日本では、原材料費の値上がりはそのまま業績へと直結する問題となる。業績が好調だった企業が多かったのも、原油などの原材料費が落ち着いていたことも無関係ではない。逆にいえば、この原材料費が値上がりすればそれだけ業績の悪化にもつながる可能性がある。
世界経済が堅調な成長を見せているのは先述の通りではあるが、その中心にあるのはやはりアメリカや中国といった大国である。実際にアメリカや中国の経済は安定した状態で推移しており、こうした要因が日本企業にもプラスに働いたという点も大きい。ただし、これらの大国には問題がないわけではなく、北朝鮮問題や中東情勢といった地政学リスクはいつどこで顕在化するかわからないからだ。また、企業についても経営戦略として思い切った投資を進めるといったケースは少数であり、今後来たるべきリスクに備えるという経営者のほうが多い傾向にある。上場企業が好調な状態にあるのは歓迎すべき状況ではあるが、先行きの不透明感が漂うという点もまた事実なのだ。(編集担当:久保田雄城)