仮想通貨は、良くも悪くも注目を集めている存在である。投資目的で利用する人も多く、中には多額の利益を得たという人もいれば大きな損失を出したという人も少なくない。そんな仮想通貨における話題として最も注目を集めたのは仮想通貨交換業者コインチェックの不正流出問題だろう。仮想通貨というものに対して漠然とした理解を持っていた人も、この不正流出問題を受けて仮想通貨の存在を認識する機会となったのではないだろうか。そんな仮想通貨の業界でこのたび、統一団体が設立されることとなった。
そもそも仮想通貨業界はそれぞれの業者ごとに独立して運営が行われていたこともあり、かねてから統一団体を設立すべきとの検討が続いていた。コインチェックの不正流出問題があったとはいえ、統一団体の設立は仮想通貨業界全体の動きとして重要なものだったといえるだろう。また、金融庁からも業界全体でルールを統一化するよう働きかけが行われていたことも大きく関係している。仮想通貨のシステムについてはコインチェックのみならず様々な面で不備が判明しているケースも多く、監督する金融庁からの要望を受けての設立ともいえる。
今回設立される仮想通貨の統一団体は、金融庁に「自主規制協会」として認定されることを当面の目標とする。金融庁では現在仮想通貨の交換業者として16社が登録されているが、統一団体が設立されればこれらの業者の参加に加えて登録申請中の新規参入業者の参加も予定されている。統一団体として金融庁に認定されれば、罰則付きの規定を作ることも可能となり、仮想通貨のシステム面の不備を調整するなど環境整備を進めるといったこともできるようになる。また、仮想通貨による資金調達に関するガイドラインをまとめるといったことも視野に入れており、まさに仮想通貨の取引における全体のルールを作ることがこの団体における大きなテーマとなる。
現在、日本では金融庁への仮想通貨交換業者の登録審査が進められているが100社待ちともいわれるほど難航しているのが現状である。中には金融庁の登録が行われないまま取引を行う業者も決して少なくないため、こうした問題が表面化してきたことも仮想通貨の統一団体の設立を推進している。また、こうした統一団体が設立されれば悪質な業者の排除も進められるため、仮想通貨の取引を検討する利用者にとってもメリットは大きいと考えることができる。その反面、すぐに実効性の高い方策を新団体が打ち出せるかどうかは未知数であり、このあたりの課題については今後の動向に注視したいところである。(編集担当:久保田雄城)