地域の活性化は日本経済の活性化という意味においては重要な役割を果たすことになるが、その一環として注目されているのが電子地域通貨の導入だ。もともと地域通貨は、限られた地域や共同体の中でのみ使用することができる限定的な通貨だが、これを電子通貨とすることでスマートフォンでの決済ができるようにしたのが電子地域通貨である。電子化によりコストを削減することができるようになったことから、新たな地域通貨として注目を集めている。
電子地域通貨は現在様々な地域で実証実験が進んでいる。愛媛県松山市に本店を置く伊予銀行では、松山市内で電子地域通貨「IYOGIN Co-in」を利用した実証実験をスタートさせる予定だ。この「IYOGIN Co-in」は、伊予銀行に勤める行員を対象に近隣の食堂や飲食店で利用させ、技術面における課題などについての実証を行う。この「IYOGIN Co-in」は1コインにつき1円という単位となっており、使い方は電子マネーと同じくスマートフォンに現金を入金しておき、決済時には店頭に設置されたQRコードを読み込むという仕組み。伊予銀行の実証実験ではおよそ3ヶ月の予定となっている。
この他、千葉県の木更津市でも君津信用組合や木更津商工会議所と連携した電子地域通貨「アクアコイン」の導入が進む。こちらもスマートフォンのアプリを利用する仕組みとなっており、2018年3月下旬より実証実験がスタートする予定だ。利用者は事前に専用アプリをスマホにインストールしておき、現金は君津信用組合の窓口でチャージする。決済時には店頭に設置したQRコードを読み込むという点は伊予銀行の「IYOGIN Co-in」と基本的には同じであり、地域経済の活性化という目的という点でも共通している。
こうした電子地域通貨の特徴は、基本的には限られた地域でのみ利用できるという点にある。よく比較対象となるのがビットコインなどの仮想通貨だが、仮想通貨と異なり交換所による取引はできず、その価値についても増減するといったことがないため円と同じ価値で利用することができる。スマホのアプリを利用するという点で電子地域通貨は共通点も多いが、これは電子化によるコスト低下が関係している。日本国内ではこれまでにも地域通貨が発行された経緯があったが、通貨を作るうえでの管理や換金手間などのコストがかかり、定着に至らなかった。電子地域通貨では金融とITとを融合させる技術の進歩に伴い大幅にコストが削減されたため、新たな利用者の獲得が期待できるという。(編集担当:久保田雄城)